富士フイルムの「もうひとつの狙い」 和光純薬買収のメリットとは
富士フイルムホールディングスが武田薬品工業の子会社で研究用試薬大手の和光純薬工業(大阪市)を買収する。今後の成長が期待される再生医療分野に必要な事業を入手し、ヘルスケア事業を強化するのが狙い。
富士フイルムが和光株の約71%を保有する武田グループから約1547億円で買い取る。2017年2月27日から株式公開買い付け(TOB)を始め、4月には連結子会社化する予定だ。古森重隆会長は、2016年12月15日の買収発表会見で「独自の高い技術を持つ和光純薬工業とともに競争力の強い新製品を作っていける」と買収シナジーを説明した。
3大要素がそろう
富士フイルムが今回の買収で最も期待するのが再生医療分野でのシナジー効果だ。古森会長は「再生医療事業で欠けていた部分が手に入る。最高の布陣になる」と買収の意義を強調した。
再生医療では、臓器などを作るのに必要な「細胞」、細胞培養などに必要な「培地」、細胞育成・増殖に必要な「足場材」が3大要素とされている。このうち、和光純薬が高い技術を誇るのが培地だ。
富士フイルムは近年、再生医療に力を入れており、これまでも医療関連企業を買収し、グループ内で細胞や足場材を手がけてきた。古森会長の言う「欠けていた部分」というのは培地を指し、和光純薬の買収によって「3大要素のすべてを自社グループで保有できることになる」(助野健児社長)というわけだ。
ただ、富士フイルムの狙いはこれにとどまらない。和光純薬が臨床検査薬の販売で全国に築いた病院への販売網の活用という買収のもう一つのメリットがあるのだ。
国内営業網の構築が課題
富士フイルムは、写真フィルム市場の縮小に伴い、2008年に製薬会社の富山化学工業を買収して医薬品事業に本格参入した。その後も積極的なM&A(買収・合併)で事業を拡大してきたが、後発のために国内営業網の構築が課題だった。
富士フイルムは買収について「10年で投資を回収できる」(助野社長)とみており、2015年度に約794億円だった和光純薬の売上高を2021年度には1000億円超まで引き上げる考え。ヘルスケア事業全体では、2015年度に約4200億円だった売上高を、2018年度には1兆円に引き上げる目標を掲げている。その達成に向かって「足りないものがあれば補っていきたい」(古森会長)と今後も買収を進める考えだ。