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10月14日から放送スタートのTBS金曜ドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』。タワーマンションに暮らす住民たちの秘密や嘘が渦巻くサスペンスドラマで、菅野美穂さんをはじめ、松嶋菜々子さん、EXILE / 三代目 J Soul Brothersの岩田剛典さんなど、豪華キャストが出演するとあって放送前から話題となっています。一見華やかなタワーマンションの内情を、虚栄心渦巻く世界として描く同ドラマ。制作にあたり、実際の「タワマン住民」に綿密な取材を重ねたという浅野敦也プロデューサーに、タワマンの人間関係そしてドラマの見どころについて聞きました。

滑稽な“タワマンヒエラルキー”がドラマを盛り上げる!

まずはドラマのあらすじをご紹介しましょう。

――平凡だが家族仲良く暮らしてきた、菅野美穂さん演じる主婦・高野亜紀。きらびやかなタワーマンションに引越してきたばかりの高野家には、最新鋭のセキュリティに守られた“憧れの新生活”が待っている……はずだった。しかし、光り輝く塔の裏にひそんでいたのは、タワマンに住むセレブ妻たちの激しい虚栄心。そんなアクの強い女たちの生態を、松嶋菜々子さん演じる隣人・佐々木弓子は巧みに利用し、思いもよらない方法で亜紀を追い詰めていく……。

完全オリジナル脚本のヒューマンサスペンスで、脚本の完成にいたるまで、およそ3年かけてタワマン住民を取材したというからスゴい。その取材を通して、タワマンに住む人ならではのユニークな価値観に触れたと浅野さんは言います。

「とくにお子さんをお持ちのお母さんたちは、やはり住んでいる階層での格差を気にされている印象を受けました。階に応じて子どもを中心にしながら、自然とサークルが結成されているようです。やはり高層階の住民のほうがより発言力もあるし、パワーもあるというか、タワーマンション自体に対しても影響力が強いようですね。なので、中間層の方々は気を使ってらっしゃるんだなと思いました」(浅野さん、以下同)

タワマンは階が上になればなるほど、ステータスが上がるというのが公然の秘密。それにより、滑稽なヒエラルキー意識が生まれてしまうのだろうと、浅野さんは分析しているようです。

「ドラマのシーンにも登場しますが、初対面のときにまず階数を気にするんですよね。『お宅は何階の方ですか?』とか、名前も呼ばずにどのフロアに住んでいるのか聞くことがあるようで、裏を返すと低層階に住んでいる人は、非常にネガティブな感情を抱くこともあるようです。大人だけではなく、子どもも幼稚園などで、『君、何階?』って聞くとか、相手よりも高い階に住んでいると誇らしい気持ちになるようです」

【画像1】実際にタワマンで暮らす住民への取材を重ね、シナリオ制作は数年かかったと語る浅野敦也プロデューサー(写真撮影/片山貴博)

“強制ハロウィン” “地獄のランチ”は実話がもとに

階数を気にするというのは何ともタワマンらしいエピソード。しかし、マンションという共同体で暮らしている以上、階をまたいでお付き合いをする必要もあります。ちなみに、ドラマでは“強制ハロウィン” “地獄のランチ” など字面だけでもしんどそうな交流も描かれる模様。かなりインパクトのあるネーミングですが、実話なのでしょうか?

「はい、実話です(笑)。タワマンで行われているハロウィンは大きなイベントで、ものすごく準備をしないといけません。そのため、自分たちだけ手伝わないという空気を出しにくく、なかば強制参加となっているわけです。普段仲良くない住民同士も協力し合わないといけないので、とても楽しい半面しんどいと感じる人もいるようですね。また、ランチ会もやはり定期的に行われるようで、本格的なレストランに行くこともしばしば。ときには5000円以上にのぼることもあるので、収入が少ない方は苦しいですし、定例になってくると本来ならばプライベートに使いたい時間をそちらに費やさないといけない、というストレスにつながってしまうそうです」

【画像2】タワマンの高層階に住むボスママ、横山めぐみさん演じる阿相寛子(中央)の強烈なセリフにも注目!(画像提供/TBSテレビ)

とはいえ、面倒であれば無理に付き合いを続ける必要もなさそうなものですが、とくにファミリーの場合、のっぴきならない事情もあるようです。

「子どものために我慢しなきゃいけない、という気持ちが働くのではないでしょうか。一人暮らしであれば無理をする必要はないわけですが、子どもがいると幼稚園や小学校、中学校まで一緒のことがほとんどで、お付き合いが続いていくことになります。さらに、学校だけではなく習い事や塾でも自分のマンションの人と触れ合うことになります。そういう事情もあるので、お付き合いを無下にはできないという心理が働くのではないでしょうか。あと、人間関係を円滑に進めようと頑張るタイプの方は、波風立てないようにうまく付き合いたいと思うのかもしれませんね」

濃密になりがちなタワマンコミュニティ。ドラマの主人公・亜紀もそのコミュニティに翻弄されるわけですが、もしコミュニティの付き合いがストレスになるときはどうすれば……?

「どうしたらいいんでしょうか……(笑)。やはり、はっきり言うべきときは言っていいんじゃないでしょうかね。どこの世界でもそうだと思うんですが、耐えられなくなったら思い切って言う。あとはもうきっぱりその関係性を断ち切る、どちらかしかないと思うんです」

タワマンの魅力は抜群の住み心地と安全性

ここまで話を聞いていると、タワマンはいいところがあまりないように感じてしまいそうですが、もちろんタワマンならではの住み心地の良さは特別だと浅野さん。

「セキュリティが万全なところ、あとは共用スペースがしっかりしているところはタワマンの魅力ではないでしょうか。やはりセキュリティについてはしっかりと守られているだけあって、暮らしの安全面が気になる方にとっては非常に安心感を抱けると思います。また、共用スペースには図書館やカフェテリア、ジムなどが完備されているタワマンもありますので、そのなかで暮らしていけることもあります。そういうライフスタイルの利便性を求めている人にとっては、本当に住み心地がいいと思います」

ちなみにドラマでは、豊洲のファミリー向けのタワマンを舞台にしているそうですが、六本木や新宿などのタワマンだと住んでいる層が全く異なり、独身の起業家がステータスを求めて住むなど、住民が求めることも違ってきます。いずれにしても、暮らしの安全性と利便性の確保という意味では、タワマンは強い魅力をもっているといえるでしょう。

最後に、ドラマの見どころを教えてもらいました。

「菅野美穂さん演じる主人公・亜紀はタワマンの真ん中、25階に住んでいます。たまたま、部屋が空いて住むことができたのですが、そこは低層階と高層階のちょうどその狭間。菅野さんは明るく前向きに振る舞っていくんですけど、結局いじめの対象になってしまいます。高層階には、横山めぐみさん演じるボスママが君臨しているのですが、もう笑ってしまうくらい人を蔑(さげす)むようなセリフを放つんです。それがあまりにも苛烈すぎて笑ってしまう。『2階の住人と私達とは民度が違うから』とか、放つセリフが突き抜けすぎて、滑稽なので、逆にスカッと楽しんでいただけるのかなと思います。タワマンあるあるをエンターテインメント的に楽しんでいただきつつ、じわじわと迫ってくる隣人・松嶋菜々子さんが何者なのかというサスペンスの中に、岩田剛典さん演じる体操の先生とのラブストーリー要素もあるので、いろんな見どころをぜひ楽しんでいただきたいです」

【画像3】タワマン特有のルールに翻弄される、菅野美穂さん演じる主婦・高野亜紀(左)と、そんな亜紀の幼馴染みで、心の支えになる体操コーチ・生方航平役の岩田剛典さん(右)の淡い恋(?)の行方も気になる(画像提供/TBSテレビ)

綿密なリサーチをもとにしたストーリーを楽しみながら、タワマンの暮らしぶりを身近に感じることができそうです。 とはいえ、人の暮らしは十人十色。ストレスフルな人間関係が横行するタワマンばかりではないはずです。実際のところSUUMOジャーナル編集部では、これまでにも住民同士がとてもいい関係を築いているタワマンをたくさん取材しています。しかし、万が一、ドラマに登場するような人間関係に悩んでしまったらどうするべきなのか……ドラマ『砂の塔』にはそんな不安を解消するうえでのヒントも隠されていそうです。

●取材協力
TBS金曜ドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』