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横断歩道を渡ろうとする歩行者に対してクラクションを浴びせるーー。そんなドライバーに対して「運転免許返納すればいい」と憤るブログ記事が、はてなブックマークで話題となった。

ブログ主は、信号のない横断歩道で、ベビーカーを押している母親らしき人に対して、クラクションを鳴らす自動車を目撃。ブログで「そもそも車は横断歩道に歩行者がいたら止まるべきなんじゃないの?」と指摘していた。

車が横断歩道で一時停止しないことは、法的にはどんな問題があるのか。道交法に詳しい木野達夫弁護士に聞いた。

●横断している人がいた場合、自動車は停止する義務がある。

「法律違反にあたります。道路交通法38条によれば、横断歩道の付近に、明らかに人や自転車がいない場合以外は、原則として自動車に徐行義務があります。ただし、信号機つきの横断歩道で、『車道が青、横断歩道が赤』という状況で、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいない場合には、徐行せずに進行することができます。

そして、横断している(しようとしている)人や自転車がいる場合は、自動車には一時停止する義務があります。信号付きの横断歩道で、『車道が青、横断歩道が赤』という状況だった場合でも、歩行者が横断しようとしている場合は徐行、現に横断している場合一時停止する義務があると考えられます(この点は38条の問題ではなく、70条の安全運転義務の解釈から導かれます)。

これらの義務に違反した場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます(119条1項2号、119条1項9号)。

ちなみに、『渡ろうとしているとは思わなかった』という言い訳は通用しません。なぜなら、道交法38条違反の場合は過失犯も処罰されるからです(119条2項)。もっとも、この場合の罰則は10万円以下の罰金です」

木野弁護士はこのように指摘する。横断しようとしている人に対して、クラクションを鳴らすような行為は問題になるのか。

「こうした行為も法律違反になります。まず、先ほど述べたように、横断中の歩行者がいれば自動車は停止しなければなりません。また、自動車がクラクションを鳴らしていいのは危険を防止するためやむを得ない場合のみです(54条2項)。

この場合、自動車が停止すれば危険は避けられるので、当然、『やむを得ない場合』にはあたりません。違反した場合は、2万円以下の罰金または過料に処せられます(121条1項6号)。

また、横断歩道前で一時停止した車に対して、後続車がクラクションを鳴らす行為も違法です。なぜなら、制限速度を守って走行していれば普通に停止できるはずであり、『早く走れ』という意味でクラクションを使うこと自体違法だからです」

木野弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
木野 達夫(きの・たつお)弁護士
兵庫県弁護士会所属。昭和63年大阪府立大手前高校卒業、平成7年神戸大学法学部卒業。平成12年司法試験合格。平成21年より梅田新道法律事務所パートナー弁護士就任。平成24年兵庫県弁護士会に登録変更し、宝塚花のみち法律事務所にて執務開始。平成26年より兵庫県弁護士会伊丹支部副支部長
事務所名:宝塚花のみち法律事務所
事務所URL:http://www.hananomichi-law.com/