リーグ戦チーム最多6得点を決めている興梠。リオ五輪でのオーバーエイジ招集はあるのか? (C)SOCCER DIGEST

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[J1・1stステージ15節]浦和0-2鹿島
6月11日/埼玉スタジアム2002

 浦和レッズのFW興梠慎三が鹿島アントラーズ戦後、リオデジャネイロ五輪のオーバーエイジの有力候補者に挙がっていることについて言及した。
 
 スポーツ紙で3人に絞られたとして、興梠の名前が大々的に報じられた。その件について試合後、興梠は質問が来ることをある程度想定していたようで、次のように答えた。
 
「そのように名前が挙がることは光栄で、嬉しいことです」
 
 そこで3秒ほど、時間が空いた。ひと呼吸を置いて、次のように続けた。
 
「ただ、僕は浦和レッズの一員であることを大事にしているので、よく考えて決断をしたいです」
 
 以前に候補者に挙がった際には「それはない」ときっぱり否定していただけに、招集の余地は生まれたと言えるか。ただ、その沈黙の3秒に、彼の複雑な胸中の想いが込められている感じもした。
 
 興梠は過去2年、シーズン終盤に怪我を負ったことで彼らしいパフォーマンスを発揮し切れず、悔しい想いをしてきた。タイトルを獲得できずにいることへの責任を痛感しており、今季に懸ける想いは強い。
 
 では、今後はどのような点が招集へのポイントになるのか整理したい。
 
 日本サッカー協会からクラブと興梠のもとに、なにかしらオーバーエイジに関する打診は来ていると見られる。また「OAを含め1チーム原則3人まで協力し合うことになっている」と話すJリーグの原博実副理事長は、浦和のOBでもあり、クラブはオーバーエイジ招集に関して無碍に拒絶せず、話を聞く考えはあるようだ。
 
 ただし、五輪招集メンバーはリーグ戦第2ステージを最大5試合ほど欠場しなければならない。浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督はDF遠藤航とMF関根貴大を夏に欠くことを想定しトレーニングを積んでいることを認めていただけに、チーム最多得点のエースまで抜かれるとなれば“誤算”に違いない。フロントと現場を結ぶ山道守彦強化本部長、そして現場を司る指揮官が果たして招集を認めるかどうかも焦点になる。
 
 浦和としては、フロントが日本協会やJリーグに対しておよび腰になり、ペトロヴィッチ監督が矢面に立たざるを得なければならない――というような、クラブ内に衝突が起きることだけは避けたいところ。クラブ内での見解はひとつにまとめて、対応したい。
 

 一方、日本サッカー協会や手倉森誠監督としては、“本気”であれば、まず興梠との面会を実現させたいはず(すでになにかしらの接触はあった?)。そんなシチュエーションに持ち込めれば、手倉森監督の一世一代の“口説き”が試されるだろう。
 
 浦和対鹿島戦後の興梠のコメントの主旨は、次のとおり。
 
――試合全体をとおしての感想は?
 
「パスをつなぐことはできていたが、シュートやラストパスの精度は反省しなければならない」
 
――次第に撃ち合いになったが?
 
「相手の狙っているカウンターに対して、締め方がとても悪かった。やられたくない形で、失点を与えてしまった。自分たちが駄目でした。チャンスを与えてしまったし、個人的には一番負けたくない相手だったが……」
 
――オーバーエイジの有力候補と報じられたが?
 
「名前が挙がるのは、とても光栄なこと。嬉しい。ただ浦和レッズの一員であることを大事にしているので、よく考えて決断をしたい」
 
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)