タバコが健康に悪いというのは誰もが知っていること。しかし『自分はいいんだ』とか『早死にしてもいい』という喫煙者がいます。このようにネガティブな発想は、禁煙できないことを合理化しているにすぎません。タバコがやめられない自分を無理やり納得させているだけなのです」

そう語るのはFMC東京クリニックの中村靖院長。胎児検査・診断が専門の中村先生は、禁煙をテーマにした講演や指導も行っている禁煙専門医でもある。そんな中村先生に、最新の“オンナの禁煙事情”について聞いてみた。

「これまで『女性は男性と比べて禁煙しづらい』という研究報告があったのは確かです。体の作りやホルモン環境の違いから、喫煙習慣の傾向や、ニコチンに対する反応性などに男女差があることは、確かなようです。しかし、最新の研究では、禁煙の成功率に男女差はあまりなく、むしろ個人差が大きいということがいわれてきています。性別の違いは大きくないと、私も考えます。女性だからやめにくいという情報は、誤った方向に導く可能性があると危惧しているくらいです」

とはいえ、“禁煙すると太る”という懸念が、タバコをやめることを躊躇する要因になっていることも多い。

禁煙をすると体重が増えるのは事実です。ただし、その増加は平均4キロ以下で、6キロ以上増加する人は3%程度。食生活の見直しを同時に行えば、体重をキープすることは可能です。むしろ生活改善によって不健康な状態から理想的な体重になったと理解したほうがいいでしょう。とくに喫煙は脂肪代謝に影響し、メタボになりやすいのです。喫煙者はスリム、やめると太るという誇張されたイメージに騙されないことが肝心です」

また禁煙できないことを、自分の意志が弱いからという人も少なくない。そんな女性へのアドバイスを聞いた。

「病気になれば、みんなタバコをやめるのです。どんなヘビースモーカーでも、脳卒中を発症して、医師に止められると、一切吸わなくなるものです。意志の強い弱いは禁煙とはあまり関係がありません。むしろ必要なのは、発想の転換。タバコが自分にとって不要で、損にしか繋がらないことに気づくことです」