東京の吞ん兵衛たちがこよなく愛する居酒屋メニューの1つと言えば「煮込み」。おそらくそれぞれの吞ん兵衛がそれぞれの愛する「煮込み」の味があり、どれが一番というのは人によって様々であろう。

まことしやかにささやかれている東京三大煮込みや五大煮込みというものには、森下の「山利喜(やまりき)」、千住の「大はし」、月島「岸田屋(きしだや)」、立石「宇ち多゛(うちだ)」、門前仲町「大坂屋(おおさかや)」の5つが挙げられている。

どのお店ももちろん甲乙つけがたいのだが、その中でご紹介したいのが、門前仲町の「大坂屋(おおさかや)」さんだ。

「大坂屋」の創業は1924年(大正13年)。

あの関東大震災の翌年に屋台からはじまったモツ煮のお店がこちらのお店。

終戦後、現在の門前仲町の交差点にほど近い場所にお店を構え、その当時から現在までお店の中もメニューもほとんど変わらないのだそうだ。

店内は6〜8席のみのカウンターで、空いた場所に作られたカウンターを加えても最大で12名くらいしか入る事のできない小さなお店。

メニューはシロにフワ、そして軟骨の牛モツ煮込み3種類に、お新香、オニオンスライスとたまご入りスープ。

小さいお店で、メニューもこれだけ、と思うかもしれないがそんな無骨とも思えるお店にこそ、食の真髄をかんじることができるのではないだろうか?

店内に入るとなんとも言えない香りに食欲をそそられる。

たっぷりと濃厚なスープをたたえた大きな煮込み鍋で、味噌ベースの濃厚な甘辛味で煮込まれる新鮮な牛モツは、一度食べるとヤミツキになってしまうほど、妖艶な人を惹きつけてやまないほどの味わい。

そんな劇ウマのモツをビールや熱燗、梅割りで喉の奥へと送り込むのだ。

ごくりごくりと喉を鳴らすたびに、五臓六腑に染み渡るウマさはえも言われぬ快感にちがいない。

そしてたっぷりと美味しいモツを楽しんだ最後のシメは、やはりたまご入りスープ。

このたまご入りスープがまた絶品なのだ。

生卵を丁寧に洗って、煮込みの鍋に投入し、煮込み鍋で半熟のゆで玉子を作るのである。その半熟のゆで卵に煮込みの濃厚なスープをかけるのだからたまらない。

常連さんが集う門前仲町のモツ煮のお店「大阪屋」。

そこには昔から永遠に変わらない、まさに宝物のような味わいがある、そう痛感させられるに違いない。

※ただし、お店を訪れる際はしっかりとルールを守った上で、この酒場を楽しんでもらいたい。

<<こちらのお店のルール>>
・写真撮影の禁止