シカゴのMOTOレストランには、「すしペーパー」なるメニューが存在する。料理長ホマル・カンチュ氏は、でんぷんでできた食べられる紙に模様を印刷。プリンタには通常のインクの代わりに4種類の味(酸味・甘味・苦み・塩味)の食用インクが入っている。「感覚を操ることを楽しみたい」というカンチュ氏だが、このIT感覚たっぷりの料理、ちょっと食べてみたいと思いませんか?
 
 食用インクは可食用インクともいわれ、卵の表面に印字してある製造年月日や飴などに文字を描くときに使用するのがポピュラーな使われ方。残念ながら一般の人が手に入れることはなかなか難しい。しかし驚いたことに、すしペーパーと同じ原理のインクジェットプリンタが5年前の国際食品・飲料展「FOODEX JAPAN」でお披露目されていたという情報を入手! 口に入れるものがインク、ということに抵抗感がありヒットしなかったものの、「食べられるインクジェット」そのものは技術的には新しいものではないようだ。
 
 さらに西葛西にある洋菓子店「パローレ」では、でんぷんと砂糖でできたシートに想い出の写真を印刷する「食べられる写真つきオリジナルケーキ」を作っている。ここで印刷に使用しているのもアメリカ製の可食インク。「もともとアメリカの写真ケーキをヒントにはじめたところ、大反響でした。誕生日や記念日に撮った写真を使われる方が多いですね」とパローレの店員さんは語る。

 スペインの3つ星レストラン、エル・ブジのシェフであるフェラン・アドリアは、料理に紙こそ使わないものの、液体窒素で果物をたちまちドライフルーツにしたり、アルギン酸を混ぜた紅茶を塩化カルシウムでゼリー状にしたりと、まるで科学の実験室のような手法で料理を行うことを思い出した。
 
 料理にはITや科学の力がどんどん投入されつつあることは間違いない。グルメの改革が知らず知らずに起こっているのかもしれませんね。(文/verb)