世の中パクられるのは、ヒット曲や工業製品ばかりではない。植物だって、その脅威にさらされているのだ。わざわざ盗み出さなくても、流通している植物の種苗を植えれば同じものが生えてくる分だけ、むしろ被害は深刻。実際、海外に持ち出された種苗を使って生産された植物が、海賊版として逆輸入されている。

 例えば昨年末、長崎税関にて国産最高級イ草「ひのみどり」の海賊版が発見された。「ひのみどり」は「茎が細い」「花芽が少ない」といった特徴を持つ最高級のイ草。産地である熊本県が育成者権を持っていて、許可を受けた農家しか栽培できないようになっている。しかし、「ひのみどり」とそっくりなイ草が中国から輸入され、関係者はびっくり。DNA鑑定を行った結果、判定はクロだったのだ。

 そんな現状もあり農林水産省は、新たに品種保護対策官なる助っ人を配備したという。それが通称「品種保護Gメン」だ! 

 タレコミを受けて現場に急行。「そこまでだ!」ビニールハウスに品種保護Gメンが踏み込むと、挙動不審な男の手には大量のクサが握られていた・・・!

 な〜んてことはない。品種保護Gメンの仕事は主に3つ。まずは権利侵害対策のための相談や助言。ふたつ目は、情報収集。そして3つ目は品種類似性試験の実施だ。権利侵害の疑いがある品種をDNA分析して、シロかクロかを判別する。海賊版を発見したとしても、それを証明するのは個人では至難の業。そこでGメンが代わりに、判定・証明してくれるというわけだ。

 手塩にかけて作った新品種を簡単にマネされては商売あがったり。しかし、これからは品種保護Gメンが心強い味方になってくれるに違いない。ただ、権利侵害を主張するには、あらかじめ品種登録を済ましておかなければならないのでお忘れなく。(文/verb)