[ちちんぷいぷい - 毎日放送] 2015年11月12日放送で、「住宅遺産トラスト関西」について取り上げていました。


住宅遺産トラスト関西設立シンポジウムの告知画像(公式サイトより)

古くても良い建物を守っていきたい、という想いから発足した団体「住宅遺産トラスト関西」は、建築家や弁護士、建築史家などさまざまなジャンルの専門家14人が集まってできたもので、2015年10月に発足しました。目的は、時間とともに歴史を刻んで来た良質な住まいなどの建築を「生きた財産」として次の時代へ継承していくこと。

現在は、関西で2つの残すべき建物の保存をさまざまな角度で検討中です。ひとつは兵庫県神戸市で1923年に施工された「岡本の洋館」。そしてもうひとつは京都府京都市で1929年に施工された「栗原邸(旧鶴巻邸)」です。

京都市山科区の山あいの場所にあるのが「栗原邸」、昭和4年の建物です。広大な敷地の中で今もどっしりと威厳を感じさせる姿で建っているこの建物は、住居でありながら当時としては最先端の鉄筋コンクリート製。"コンクリート打ちっぱなしの家"としては日本で最初期のものなのだそうです。

レトロな雰囲気と建築法が優れた建物を継承していくために

この栗原邸を設計したのは、本野精吾という昭和初期に活躍した人物。この当時最先端だったモダンな家具のデザインも本人の手によるものです。建物の中にある家具類も残されており、室内の雰囲気は当時そのままに保たれています。

この建物で貴重なのは建築法。「中村式鉄筋コンクリート建築」という、L字型のコンクリートブロックを組み合わせて間に鉄筋とコンクリートを入れていく製法を取り入れていました。これと同じ工法で作られた建築が関東大震災でも倒壊しなかったという、折り紙付きの耐震性を誇る建築法なのです。

栗原邸は現在誰も住んでいませんが、所有者の維持費の問題などで第三者の手に渡って最終的に取り壊されてしまうことを「住宅遺産トラスト関西」では危惧しています。そのため色んなジャンルの専門家たちが建物を訪れて、どのように活用し残していけるのかアイデアを出し合っています。

たとえばシェアハウスなどにして運営すれば賃料で所有者の負担も軽くなって維持していけるのではとのこと。「住宅遺産トラスト関西」では、建物を残すことが所有者の負担にならない方法を探っているそうです。

良い建物が継承されていくことで豊かな社会の実現につながるようにと、「住宅遺産トラスト関西」では取り組みを続けています。(ライター:ツカダ)