常総学院vs日本航空

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元主将・中村迅が意地の一打!

片岡優大(日本航空)

 雨により1日空いた関東大会準々決勝。素晴らしい秋晴れの下、行われた一戦。常総学院のエース・鈴木 昭汰、日本航空のエース・片岡 優大の投げ合いの下、始まった一戦は、予想通り投手戦となる。鈴木は前回の横浜戦と比べると135キロを超えることは少なく、おっと驚くようなキレのあるストレートを投げるわけではない。130キロ前半のストレート、120キロ台のスライダー、シュート、カーブを散らせて打たせて取る投球。

 片岡は中1日明けたのが良かったのか。白鴎大足利戦に比べると格段に良く、左足を勢いよく上げてから、歩幅を広く取って踏み込んで、テイクバックをコンパクトに取って、右ひじを高く上げて、打者寄りでリリースするバランスの良いフォームから常時130キロ中盤(最速135キロ)の直球が低めにバシバシ決まり、強打の常総学院打線を打たせて取っていく。フォームに躍動感があり、腕の振りも鋭く、ストレートの回転も良い。この冬、しっかりと自分を追い込んでパワーアップすれば、常時140キロ台も見えてくるだろう。投手としてのポテンシャル、奥行きは確かなものを持っている投手だ。

 3回裏、8番片岡 優大(2年)の安打で出塁すると、二死一、二塁となって3番豊田理樹(2年)の中前適時打で1点を先制する。だが5回表、無死一塁から9番宮谷拓人(2年)の左越え二塁打で1対1の同点に追いつく。 このまま1対1で動いたが、8回表、常総学院が二死一、三塁から7番中村 迅(2年)が打席に立つ。中村は新チームから県大会まで主将を務めていた。しかし打撃不振で、主将交代を命じられていた選手だった。中村はことあるごとに前チーム主将の宇草 孔基に相談をしていた。同じ二遊間で、尊敬していた宇草は中村の良き相談役となっていた。後輩の悩みに宇草は「そのことは気にするな。とにかく切り替えてやっていけ」とアドバイスをもらった。この一言に、「だいぶ楽になりました」と肩の力が抜けた中村。そして主将に就任した鈴木からも「これからもチームを引っ張ってくれよ!」とお願いをされた。関東大会ではチームに貢献したい。その思いで、中村は大会まで1日1000スイングを課して打撃フォームの修正を図ってきた。

 そして試合を左右する場面に打席が回ってきた中村。初球だった。甘く入ったスライダーを「反応で打ち返しました」とシャープなスイング軌道で振り抜いた打球となり、左前適時打を放ち、勝ち越しに成功したのだ。 

勝ち越し打を打った中村迅(常総学院)

 しかし裏攻め。日本航空は非常に粘りがあるチーム。一死一、三塁のピンチを招いて、日本航空は白鴎大足利戦でサヨナラ安打を放った大津樹生(2年)を送り出す。ここで2ストライクからスクイズ。常総学院バッテリーは見事にウエスト。これで三振。そして飛び出した走者をアウトにして、併殺と最高の形でピンチを切り抜ける。そして9回裏、鈴木が3人で抑え、完投勝利。勝利が決まった後、両手を突き上げて喜びを現した。

 この勝利に常総学院の佐々木監督は「鈴木は疲れがある中で、粘り強く投げてくれました」と力投のエースをたたえた。鈴木も「疲れはありましたし、ボールも切れない。スライダーも切れない。なので気力で投げました」と語るが、スライダーが曲がらない分、空振りを奪う事ではなく、低めや膝元に投げて打たせて取る投球に徹することができるのはさすがといえるだろう。

 昨夜、横浜のエース・藤平 尚真と連絡を取ったという鈴木。藤平から「負けないでくれ」とメッセージをもらい、ますます負けたくない気持ちになった鈴木は「ただ自分のためだけではないんだなと。負けた奴らの分まで戦わないといけないんだと思いました」投球スタイルは実に巧みな投手だが、マインドは非常に熱いものを持った投手である。その鈴木だけではなく、多くの選手が闘志あふれるプレーを見せる。「自分たちは去年の先輩たちのように突出した力を持った選手がいないので気持ちを前面に出すだけです」と語る中村。今までの常総学院と比べると気持ちの入りようが凄く、5回裏が終わった後に選手たちはベンチの中で、円陣を組んで声を張り上げているが、これも新チームになって取り組み始めたことである。そしてナイン誰もが復調を願っていた中村の勝ち越し打はさらにチームの結束が深まることだろう。 目指すは関東大会の頂点。どんな相手が来ても粘り強い戦いで最後は勝つ野球を見せていきたい。

(文=河嶋 宗一)

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