来年の高校生ビッグ3はこの選手だ!藤平・寺島・藤嶋で築くか黄金世代?!
ドラフトではその世代を代表する3名の選手のことをビッグ3と呼ぶ。来年の高校生のビッグ3は誰か?まだ夏まで、8ヶ月ある中で、これから抜きつ抜かれつと、実力は拮抗していくが、現時点での高校生プレーヤーで、右投手・左投手・投打の総合力と、それぞれのカテゴリで“ピカイチ”という選手を挙げてみた。
右投手は藤平 尚真がトップに君臨し続けるか?藤平 尚真(横浜)
来年は有力な右投手が実に多い。その中でのトップは藤平 尚真(横浜)だろう。145キロを投げるだけではなく、投球の完成度がずば抜けているのだ。
大貫中時代、藤平は侍ジャパン15U代表として、そして当時から140キロ台の速球を投げ込む投手として評判の選手だった。そんな藤平は名門・横浜高へ進学。入学時から多大な期待をかけられていたが、挫折を味わう。1年秋、慶應義塾戦でコールド負けを喫し、さらに2年春は大会直前に右ひじに死球を受けて、春季大会は未登板に終わり、歯がゆい日々を送っていた。
今年の夏、渡辺 元智前監督のラストサマーで甲子園出場を目指す横浜が勝ち進むには、藤平の復活がカギと見られていたが、藤平は見事復活を遂げる。初戦の光明相模原戦で登板すると、5回を投げて被安打1、6奪三振。その時の投球は非常に強烈だった。スピードは130キロ後半ぐらいだったが、回転が素晴らしく、手元でぐっと伸びるようなストレート。そして上半身と下半身を連動させた完成度の高いフォームで、まさに逸材と呼ぶにふさわしい投球だった。藤平はエースとしてチームを決勝に導いたが、東海大相模に敗れ甲子園出場を逃し、またも屈辱を味わった。
打倒・東海大相模を掲げて厳しい練習に取り組み、センバツを目指して臨んだ秋季大会では、準々決勝で東海大相模と対戦。藤平は8回を投げ、10奪三振1失点の快投で東海大相模にコールド勝利し、リベンジを果たした。この試合で藤平は最速145キロを計測。スライダー、カットボール、カーブをうまく使い分け、投球のコンビネーションも抜群で、隙がなく、高校2年生の投球とは思えないぐらいの完成度があった。そして決勝戦の桐光学園戦でも完封勝利。まさに敵なしの投球を見せた。しかし関東大会では常総学院(試合レポート)に敗れ、センバツを逃した。
この悔しさを糧に来年は世代ナンバーワンピッチャーと呼べるようなピッチングを見せてほしい。
[page_break:左腕投手は寺島 成輝がトップ。大事なところで勝てる投手になりたい]左腕投手は寺島 成輝がトップ。大事なところで勝てる投手になりたい寺島 成輝(履正社)
左のナンバーワンは寺島 成輝(履正社)だ。1年夏から活躍しており、特に印象的だったのは2014年夏の大阪大会準決勝の大阪桐蔭戦。先発・永谷 暢章が1回5失点で降板。2回から登板した寺島は8回を投げ、大阪桐蔭打線を1失点に抑える好投を見せた。
当時の寺島はテイクバックが小さく、出所が見難い実戦的なフォームから130キロ後半の速球を投じており、高校1年生とは思えない好投手だった。寺島ならば、再び全国を狙える投手になるかもしれない。そんな凄さを感じさせたが、1年秋は5回戦でPL学園に1対5で敗れ、センバツを逃した。
この悔しさをバネに寺島は春先、大きくパワーアップを遂げた。コンパクトなテイクバックから、打者寄りでリリースする実戦的なフォームに躍動感が加わり、ボールに力強さが出てきた。常時140キロ台の速球(最速148キロ)、キレのあるスライダー、スクリュー、カーブを内外角に散らせる投球は簡単に打ちとれない凄味を感じさせ、2016年のドラフト上位候補と評価する声も多くなってきた。
しかしなかなか勝てなかった。この夏、履正社はいきなり大阪桐蔭と対戦し、寺島が先発。この試合の寺島はとにかくコーナーへ突く投球を見せたが、大阪桐蔭はなかなか手を出さず四球となり、走者が溜まったところで打たれるというパターンで5失点を喫し、敗戦投手となった。
新チームが始まって寺島は主将、4番、エースの三役を務める立場となった。まさにチームの大黒柱としてセンバツを目指した寺島だったが、秋季大阪府大会準決勝で大阪桐蔭に敗れ、3位決定戦でも阪南大高戦に0対1で敗れ、またもセンバツは厳しくなった。あと1年。大事な試合に勝てる投手を目指して、来年はより成長した投球を見せてほしい。
[page_break:投打の総合力では藤嶋 健人 来年は投打で大暴れしたい]投打の総合力では藤嶋 健人 来年は投打で大暴れしたい藤嶋 健人(東邦)
投打の総合力という点では藤嶋 健人(東邦)だろう。藤嶋が一気に注目を浴びたのは第96回愛知大会5回戦の豊川戦。藤嶋は常時140キロ台の速球で、選抜4強入りした豊川打線に立ち向かっていった。打者を三振に打ちとるたびに雄叫びを上げる気迫のこもった投球で11三振を奪い、3失点完投。1年生投手がその年の選抜4強を封じ込めるという非常にインパクトある投球であった。そして決勝の栄徳戦でも11奪三振の快投で、甲子園出場を決めた。
甲子園初戦の日南学園戦で先発した藤嶋は、8回を投げて3失点の好投で甲子園初勝利を挙げると、2回戦の日本文理戦では5回3分の1を投げて3失点と敗戦投手となったが、その気合い満点の投球は高校野球ファンの心をつかんだ。しかし秋も甲子園出場を逃し、この夏は愛知大会準決勝で中京大中京にコールド負けを喫した。その後、藤嶋は主将に就任、さらに4番で出場。寺島と同じくエースで4番でキャプテンも務める重責の中、チームを引っ張ることとなった。
ここまで藤嶋の投手としての活躍を書いてきたが、野手としての藤嶋も素晴らしく、パワフルなスイングから本塁打を量産。今夏の愛知大会では3回戦の渥美農戦で2本塁打5打点の大活躍を見せるなど、17打数6安打、2本塁打、5打点と打者としても結果を残しており、野手として評価する声もある。
この秋、投打でチームを引っ張り、秋季愛知県大会優勝を決めると、東海大会では準々決勝の中京戦で7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成し、準決勝の三重戦では最速146キロを計測したストレートとスライダーのコンビネーションで1失点完投勝利を挙げた。決勝戦では初回に6点を奪われるとなど計9失点したものの打線が爆発し、また藤嶋も本塁打を打つなど10対9で東海大会優勝を果たし、明治神宮大会出場を決めた。投打でパワフルなパフォーマンスを見せている藤嶋。明治神宮大会でも注目選手となるだろう。
1年前、野球部訪問で東邦に赴き藤嶋に目標を聞いたところ、こう答えていた。「0対0の試合では絶対に先に点を与えない、勝てる投手になること。そして球速も150キロを目指すことです」その目標は着実に近づいている。ぜひ来年は投打で大暴れを見せてほしい。
現時点でのビッグ3はこの3人。3人にはその世代をトップで君臨し続ける選手であり続けてほしいが、それを追い抜くような選手が出てくることにも期待したい。切磋琢磨することで、多くの選手が成長し、ぜひ黄金世代になることを願っている。
(文=河嶋 宗一)
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