現在の法律では女性天皇は誕生せず

「女性・女系天皇については、小泉政権時の『皇室典範に関する有識者会議』で議論が行われましたが、悠仁親王殿下のご誕生で中断しました。その際、政府関係者に”これで、もう今後も議論はできなくなりましたね”という話をしました。制度の議論をしても”愛子内親王殿下と悠仁親王殿下のどちらがいいのか”という話になってしまうと思われたからです。ご誕生になる前から、もっと議論しておくべきでした」

と言うのは皇室ジャーナリストの山下晋司さん。どうやら、このままでは”女性・女系天皇”誕生のハードルはかなり高くなりそうだ。現行の皇室典範では、皇位継承者は「皇族に属する男系の男子」と定められているため、愛子さまが天皇になることはできない。

そうなると、現在の継承順位は皇太子さま、秋篠宮さま悠仁さまの順で、宮家の秋篠宮家から天皇が誕生する可能性がある。

宮家は、天皇・皇太子の世帯を本家とすると、分家にあたる。通常、男性皇族は結婚などで独立する際に天皇から宮号を賜る。現在の宮家は4つ。天皇陛下の次男である秋篠宮家、陛下の弟の常陸宮家、昭和天皇の弟の三笠宮家、その息子である高円宮家である。

「天皇家本家より、宮家の皇族方は自由度が増しますが、近代皇室において、宮家の男子皇族は生涯、宮家のまま。これまで約230年間、宮家から天皇になった方はいません」

このままでは皇太子が不在に

迎賓館赤坂離宮での悠仁さま(’10年5月)

秋篠宮家は宮家ながらもほかの宮家とは”事情”が異なると山下さんは指摘。

「皇太子殿下が即位されると、皇位継承順位第1位は秋篠宮殿下になります。ただし、『皇太子』というのは”皇位継承順位第1位”かつ”現在の天皇の子ども”と皇室典範で定められていますので、天皇の弟となる秋篠宮殿下は皇太子にはなりません」

皇太子不在となってしまう恐れがあるのだ。すると、これまで皇太子が執り行ってきた公務をどうするか、などの問題が生じてくる。

「現在、皇太子殿下が行っておられる公務は秋篠宮殿下が引き継がれることになるでしょう。宮内庁では、両陛下と皇太子ご一家を手厚くお世話していますが、秋篠宮家に対しては手薄なままです。しかし、これまでの宮家と同じような扱いをするわけにもいきません」

そこで宮内庁は、法改正をともなわない範囲で、例えば秋篠宮家に配置する職員の数を少しずつ増やすなどの対応をしている。

「秋篠宮家が創設されたころの職員は7〜8人でしたが、1、2年に1人ずつ増やすなどして、現在は22人になっています。しかし、根本の制度を変えなければ、宮内庁ができることにも限界があるでしょう」

山下晋司さん ●皇室ジャーナリスト。昭和63年から平成7年まで、宮内庁の報道担当を務める。