AppleでもAndroidでもないスマートウォッチ「Pebble Time」実機レビューが登場
クラウドファンディングサイトのKickstarterで歴代最高記録となる出資額約2000万ドル(約25億円)を集め、世界中から多くの期待を集めたスマートウォッチ「Pebble Time」の出荷が2015年5月末に開始されました。Apple Watchでもない、またAndroid Wearでもない「第3の勢力」とも呼べるPebble Timeがどのようなデバイスに仕上がっているのか、The Vergeが実機レビューを行っています。
Pebble Time review | The Verge
前モデルであり同社初のスマートウォッチである「Pebble Watch」の登場から2年、「Pebble Time」はその2年の間にユーザーから受けたフィードバックや新しく開発された機能を搭載した新型スマートウォッチです。iPhoneとAndroidの両方で使え、1度の充電で7日間の連続使用が可能という特徴はそのままに、カラーディスプレイを搭載して周囲はシルバーのベゼルが配置されており、初代よりもデザイン性が向上しているといえます。
初代Pebble WatchがKickstarterのキャンペーンで空前の成功を遂げてから約2年という月日がたち、スマートウォッチを取り巻く状況は大きく変化しました。Android陣営からは次々とAndroid Wearが登場しており、AppleからもiPhoneと連携して使い勝手を高めるApple Watchが発売されるなど、スマートフォンの立ち位置は「未来のデバイス」から「いつでも手に入れられる便利なデバイス」へと変化しており、それに伴ってユーザーがスマートウォッチに対して持つ視点もより具体的なものへと姿を変えてきています。
そんな状況で発売されたPebble Timeを使ったThe Vergeのレポーターは、Apple WatchやAndroid Wearと渡り合うことができるのかという問いに対し、「求めるもの次第によっては、勝てる」としながらも一方では「より多くのものを求めてしまう気持ちを払しょくすることはできない」と、その長短を以下のムービーで語っています。
2012年に登場した初代モデル「Pebble Watch」は、プラスチック製の本体に白黒ディスプレイを搭載したモデル。後に登場するAndroid WearやApple Watchに先駆けて登場したスマートウォッチとして多くの人気を集めましたが、見た目が少しチープという評価を受けることも多かったようです。
搭載されるディスプレイは、1.26インチ・144×168ピクセルのeペーパーディスプレイ。液晶ディスプレイとは異なる仕組みを持ち、低消費電力性に優れるeペーパーを採用したこともあり、Pebble Watchは1回の充電で4〜7日間の連続使用が可能です。
プラスチック製の本体がカジュアルすぎたためか、しばらく後にスチール製の本体を持つ「Pebble Steel」も登場。しかしこれは外観だけの変化で、中身はPebble Watchと同一でした。
そして2015年、満を持して登場したのが、デザインを一新してカラーディスプレイを搭載した「Pebble Time」です。
カラーディスプレイとは言っても他社製スマートウォッチに搭載されている高精細ディスプレイとは大きく異なるのがPebble Timeのディスプレイ。ピクセル数そのものやピクセル密度は従来のPebble Watchと同じレベルにとどまっているようで、ドット感が目立ち明るさも弱く感じられる様子。eペーパーを搭載するメリットと引き替えに、ある程度の性能が犠牲になっているのは間違いないようです。
しかし、eペーパーの効果を感じられるのが、日中の屋外での視認性の高さだそうです。
このように、太陽が直接照りつける環境でも視認性は抜群。というよりも、外光をディスプレイの底で反射させる構造を持っているため、外部が明るいほど見やすさが増すようです。
本体を裏返してみると、手首の形状に合わせてラウンドする背面の形状が特徴的。
前面に金属素材を用いたPebble Timeは確かにゴージャスな見た目といえますが、それ以外の部分はプラスチックで作られています。
そのため、本体そのものの剛性感はあまり高くない様子。プラスチック特有の「パコパコ」した感触があり、「カチッと感」は感じられないようです。ただし、ムービーでは触れられていませんが、金属製ボディを持つ兄弟機「Pebble Time Steel」になると、その印象は一気に変わる可能性もあります。
本体にはボタンを4つ装備。正面から見て左側には1個……
そして左側には3個のボタン。この3つのボタンが、Pebble Time独特のUIに大きく役立っています。
また、3つのボタンの下には集音用の小さな穴が開けられており、その奥にはマイクが内蔵されています。
Pebble Timeは防水性能を備えたスマートウォッチです。最大で水深30メートルまで対応しているため、日常の使用では水の影響を受けることはほとんどないと言って良さそう。
Pebble Watchから大きく変わったのが、充電・データ通信用のポート。本体サイドにあった端子が背面に移動したことで、ストラップベルトに内蔵した機器機器との連携を行いやすい構造となっています。
その利点を生かして、Pebbleではサードパーティー製の特殊ストラップの登場を期待している模様。さらに充電容量を増やすバッテリー内蔵型や、心拍数の計測センサー、GPSセンサーなどを内蔵したストラップなどが登場しそうです。
装着時に右側に来る3つのボタンは、独自のUI「TIMELINE」に特化したレイアウト。真ん中のボタンを押すと現在時刻が表示され……
上のボタンを押すと、過去36時間のあいだに発生したイベントを確認可能。受信したメールやワークアウトした内容、好きなスポーツの結果などを確認できます。
そして下のボタンはこれから先の予定を確認するボタン。本日の予定や面白そうなテレビ番組の情報、そしてこれから先の天気予報などを確認できるようになっています。なお、ムービーを見るとわかるように、画面の動きは滑らかなアニメーションで表現されています。
メールの確認もPebble Time上で可能とのこと。特にAndroid版は簡単なクイックメッセージを送信できるようになっており、利便性が高そう。
iPhoneではメッセージの作成はできないようですが、受信したメールを削除するなどの簡単な操作はiPhone本体を触らずともできるようになっています。
また、Android版ならではの機能が、メッセージの読み上げ機能だそうです。
このように、新しくなったPebble Timeは多くの機能が追加されたり、新UIによるエクスペリエンスが拡充されている模様。実際にPebble Timeを使ってみたThe Vergeのレポーターによると、従来のPebble Watchを好んで使っていたユーザーにとっては新型のPebble Timeは「買い」のモデルとのことではある一方で、それ以外のユーザーやAndroid Wear・Apple Watchから乗り換えをするほどではないという結論に達したそうです。これはもちろん個人の主観があり、どのような機能を優先するかによっても大きく変わるのですが、購入を検討している人にとっては大きなヒントになるのかもしれません。
Pebble Timeの特徴を総合すると、AndroidとiPhoneの両方で使えるスマートウォッチであり、明るい太陽光下でも見やすいカラーeペーパーディスプレイを搭載したことにより、連続使用時間7日間というスマートウォッチとしては驚異的な長寿命を持つデバイスということができそう。一方のマイナス面は、画面の解像度の低さやタッチ操作をサポートしない点、プラスチック系素材を使うためにやや低い質感、GPS未搭載、NFC非対応などの点が挙げられます。
また、価格の面でも考慮すべき点があるといえそう。Pebble Timeの市販価格は199ドル(約2万5000円)程度が予定されているのですが、搭載されている機能や品質を天秤にかけた時、これを安いととるか高いととるかは大きく判断が分かれることになるのかもしれません。主要3タイプのスマートウォッチを比較した時、現時点では最もスムーズ感が高くてハードルの低いApple Watch、それに次ぐAndroid Wear、そしてこれに対する第3勢力としてのPebble陣営という見方が浮き彫りになってきているようです。