夏休み映画NO1ヒットの呼び声高いスタジオジブリの最新作「ゲド戦記」。宮崎駿監督の長男の宮崎吾朗氏の初監督作品という話題性も加わって、好調なスタートを切ったと言われている。しかし、観客の反応はいまいちだし、ネット上では酷評するカキコミも少なくない。

   「ゲド戦記」は2006年7月29日に封切られた。原作は、「指輪物語」ナルニア国物語」と並ぶ世界3大ファンタジーのひとつとされている。さらに「ジブリ映画にはハズレがないのは常識」だそうで、前作の「ハウルの動く城」(05年)の448館とほぼ並ぶ435館で公開した。待ちに待っていたファンも多く、同30日のスポーツ報知など各マスコミは「全国435スクリーンで満員スタート」と過熱人気振りを報道した。

原作者は駿監督に映画化の依頼をした
「ジブリ作品だ」と大きな期待をされているのだが…
「ジブリ作品だ」と大きな期待をされているのだが…

   この原作は宮崎駿監督が惚れ込んでいて、20年以上前から原作者に映画化を打診していた。しかし、原作者は首を縦に振らず、代わりに作ったのが『風の谷のナウシカ』だったという。その後、アカデミー賞の受賞もあってか、4年前に映画化OKの返事が来た。原作者は駿監督に映画化の依頼をしたが、「ハウル」の制作に没頭していたため、長男の吾朗氏が抜擢された。

   ジブリの鈴木敏夫プロデューサーは、同社のホームページのインタビューで「『(駿監督は)吾朗が中心になってやるなんていうことはありえない』と言いました。つまり、完全に吾朗君の監督には反対なんですよ」と答えている。その後、鈴木氏は駿監督を説得するわけだが、そんなこんなで「親子の仲が険悪になっている」という噂がネットなどで流れた。

   実は、「ゲド」と同日に、ジブリが関係したフランスのアニメーション「王と鳥」が公開され、イベントが開催された。これが「ゲド潰し!?」という憶測を呼んだ。

興行収入100億円に達するかどうか

   いずれにせよ、駿監督と吾朗氏が比べられ、ジブリの"跡取り"として厳しい目で見られる。例えば、ある掲示板はこんな具合だ。

「宮崎駿と比べるとやはり削りシーンを削り過ぎており、また絵も荒く入り込めないところがありました。画面の迫力もあまりなくなってしまったところも少し残念です」
「監督に経験が無さ過ぎたという印象。ジブリの作品とはいえない出来栄えでした」
「お金を払って見る価値は無いです。原作者に謝って作り直せ!!」
「何故、並み居る先輩を超えて出来たのか?才能の遺伝は、創作の道ではまず無い」

   ジブリ作品だから過大な期待をしてしまうのかもしれない。名も無い制作会社の低予算映画という前提だとすれば、そこそこ楽しめる内容だ。しかし、「全体的に暗く、ショッキングなシーンもあるため、子供には勧められない」というカキコミも多い。配給会社の東宝は100億円以上の興行収入を予定しているが、そこに達するかどうか疑問だ。

   7月31日、月曜日の午前11時半、J-CASTニュースの記者が新宿の上映館に入ってみると、座席は30%程度しか埋まっていなかった。映画の終了の文字がスクリーンに出ると同時に、前に座っていた女性が、両手を高く上げて大きな伸びをした。エンドロールが始まると同時に、席を立つ人も多かった。