11日、都内のホテルで新トップ人事を発表するキヤノンの御手洗会長(右)と内田次期社長(撮影:吉川忠行)

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精密機器大手のキヤノン<7751>の御手洗冨士夫会長兼社長は11日、東京都千代田区の帝国ホテルで記者会見を開き、5月23日付で社長を退任し、後任に内田恒二副社長が昇格する人事を正式に発表した。御手洗氏は会長職に専念し、同24日には日本経団連会長に就任する。

 御手洗氏は、内田氏を「他社に遅れをとり、落ち込んだ伝統あるカメラ事業を持ち上げ、大黒柱に仕立て上げた実績がある」と紹介。後任に選んだ理由について、「新しい事業を加えたいので、技術屋さんに任せる時期にしたかった」「カメラを世界ナンバーワンにしたリーダーシップと事業経営の腕を高く評価している」「私心がない。人の上に立つ人間は私心があってはいけない。使命感をモチベーションとして携わる人」と3つ示した。

 内田氏は「社業発展のために全身全力を投入して貢献したい」と決意を表明。御手洗氏は、「世界ナンバーワンになっていないものをナンバーワンにする。ナンバーワンはダントツにする」と強調し、◆全経営指標の世界トップ100入り◆環境、コンプライアンスなど世界で尊敬される企業づくり─の2点を達成目標として注文をつけた。

 御手洗体制は1995年に発足し、これまで売上高より利益を重視し、事業の選択と集中を進めた。11年ぶりのトップ人事で、御手洗氏は2010年以降の新しい成長分野の構築を見据え、技術畑の内田氏を起用。その有力候補のひとつが、東芝<6502>と共同開発している次世代ディスプレー「SED」(表面電界ディスプレー)を搭載した薄型テレビだが、発売時期を当初予定の今春から07年末に延期すると3月に発表するなど、前途多難だ。内田氏は「うっかりしていると他社に追い抜かれる。強固な体質を作り、絶対に負けないという会社作りが必要と考えている」と述べ、事業基盤の強化を掲げた。

 キヤノンでは、毎朝7時半から役員が集まり情報交換する「朝会」を実施。伝統的に席順は自由で、その日の話題を共有して、方針を確認し合う。御手洗氏は「経団連の仕事に専念し、キヤノンの通常業務をできるだけ任せたい」としながら、朝会への出席継続を強調。経営と財界活動の“2足のわらじ”となる今後について「朝7時から2時間ぐらい会社の仕事をして、9時半から10時の間ぐらいに経団連に出勤することが日課になる」と語った。

◆内田恒二(うちだ・つねじ) 1941年大分県生まれ。65年に京都大工学部を卒業し、旧キヤノンカメラに入社。99年カメラ事業本部長に就任し、コンパクトデジタルカメラ「IXY DIGITAL」を開発。同部門を世界トップに押し上げた。常務、専務を経て、06年3月代表取締役副社長に就任。週末はゴルフ練習、古代の歴史や失われた文化に関心が高いという。【了】