ドライブレコーダーはなぜヒット商品になったのか
自動車に装着する情報記録装置の一つであるドライブレコーダー。日本では映像記録タイプが2003年ごろに登場したことで、知名度が向上した。
本来の目的は、車両前方に備えたカメラで走行中の映像を撮り続け、事故などが発生したときにその前後の状況を記録することにある。事故などに遭遇することの多いタクシー・トラックなどといった営業用車両は、それまでの運行記録装置であるタコグラフだけでは事故防止が進まず、こういった装置によって所属ドライバーの安全運転の啓発に、努めたいというニーズがあった。
その後、記録映像の証拠能力が認められるようになり、事故が起きると責任を問われることが多かった営業用車両で採用されることが増えてきた。同時に、そのマーケット拡大を見越して参入する企業が増加し、発売当初は5万円を超えていた単価が2万円を切るまでに低下した。さらに、デジタルタコグラフの機能と連動させ、運転者の細かな運転状況を分析できるようになったことで、個別に安全運転指導ができるようになったことも普及に拍車をかけたといえよう。タクシーの場合は、2台目のカメラを室内に向けて装着することで、防犯機能が期待できるようになったというのも大きい。
このように、営業車に向けて多機能化したことが普及率向上に貢献したことは間違いないが、一般ドライバーにはこれらが必ずしも魅力的というわけではない。彼らが注目したのは「常時録画」によるビデオ機能である。ドライブ時のハプニング映像がインターネットの動画投稿サイトにアップされたことに端を発し、スマートホンなどで手軽に写真を撮る感覚で、「旅の記録」的な用途を持つことがわかったわけだ。要するに、機能部品ではなく嗜好品として認知されたということである。
今では駐車中にも稼働させて盗難防止機能を持たせるほか、車線・標識・ドライバーの顔などの異常・変化を読み取って警告を発することで、危険運転を防止する機能などが実用化してきている。「実用性」「嗜好性」「発展性」の三拍子がそろったことで、ドライブレコーダーはヒット商品としての地位を築いたのだといえよう。