韓国南西部の珍島(チンド)沖の旅客船「セウォル号」沈没事故発生から1週間がたった23日、台湾メディアは「沈没前の不可解な旋回」について大きく取り上げた。

 「自由時報(ザ・リバティ・タイムス)」は、「セウォル号は航路に沿って走っていたが、なぜか急旋回し180度Uターンしたと、最新資料を見た韓国政府の関係者が明かした」と伝えた。その航跡はローマ字の「J」を描いたようになっており、「J字形大旋回」と称して報じた。

 加えて「乗客名簿にない中国人男性が発見されるなど、正確な乗客数を把握していないのではないか」といった不信感を、韓国の人々が抱き始めたことも伝えている。

 ほかにも「教育部は、韓国の小中高生たちの春の遠足を当面の間、取り止めることを発表した」、「セウォル号を運航する清海鎮海運が、違法取引と脱税に関する調査を受けている」といった情報を細かく伝えた。

 また、事故を利用して選挙活動を行った厚顔無恥な市議候補がいたことも明らかになったとのこと。「遭難した学生の親だと偽り、朴槿恵(パク・クネ)大統領が家族と対面する際に進行役を務めた」事実があったとした。その人物は立候補辞退を表明したそうだ。

 政治家がらみでは、韓国の保守政党であるセヌリ党の鄭夢準議員の息子の、フェイスブック上での発言も注目された。「他国でこのような事故が起きると理性的な対応をとるが、韓国の国民は感情的になる。叫んだり罵ったりして文明人とは言えない」といった趣旨の内容が問題視され、鄭夢準議員が国会で謝罪したという。

 事故関係者ばかりでなく、政治家や一般市民と韓国全体の人々が嘆いているセウォル号の沈没事故。それだけ大きな海難事故であり、原因や問題点の追求が続く。

 自由時報は事故発生時、「乗船中の学生たちが消防防災庁に電話をかけており、その本数は約20本だった」ことも報じた。パニック状態での通話だったため担当者は状況を把握できず、しばらくたってからセウォル号だと判明したという。

 「船員と済州(チェジュ)島船舶サービスセンターの通話記録が、韓国内でテレビ放送された」件も伝えた。「船から降りるよう乗客に指示するべきか、と船員が何度も上司に訪ねたが誰の返事もなかった」といった生々しい様子が判明したようだ。船員は約30分に渡って問い続けていたと、記事は報じた。(編集担当:饒波貴子・黄珮君)