■キャンプで手応えを得た新システム4-3-3

今シーズン初めてACLを戦うことになった仙台。初のACLに向けてできる限りの準備を行うため、2月16日Kリーグの強豪で昨シーズンのACL王者蔚山現代と練習試合を行った。そこで仙台が採用したフォーメーションはいつもの4-4-2ではなく、4-3-3だった。

この試合の先発はGKが林、DFが右から田村、渡辺、石川直、蜂須賀、MFはジオゴをアンカーに置き、その前に藤村と奥埜、FW3トップは右に佐々木、左に武藤、中央に赤嶺。主力選手と若手選手、新加入選手を混ぜた形となった。

試合自体は、新加入選手、若手選手の連係ミスからの失点があり1-2と敗れたが、3トップが機能し、ACLに向けて手応えを感じられる内容だった。3トップの両翼佐々木と武藤のスピードに蔚山現代のDFが戸惑う場面が多く、チャンスは量産できていた。

■武藤はじめ若手選手がアジアチームとの対戦に手応え

蔚山現代戦の得点シーンは中盤に入った藤村が送った前線へのパスを、武藤がDFの間をうまく抜け出して受けて、左サイドからシュートを決めたものだった。盛岡商高から加入し2年目の藤村と、流通経済大から加入し3年目の武藤という若手選手の台頭が光った練習試合でもあった。

武藤は「個人的に日本のチームよりやりやすい。昨年タイでやった時も思ったが、日本のDFよりディフェンスがゆるい部分がある」、アシストを決めた藤村も「失点に絡んでしまったが、アシストできたのは良かった。見ての通り相手は良い身体で、最初は戸惑ったが、慣れてくると間のスペースでボールを受けられて、後半は持ち味を出せた」と共にアジアのチームとの対戦に手応えを感じた様子だった。

■ブリーラム・ユナイテッド戦では機能しなかった4-3-3

そして迎えた26日ACLブリーラム・ユナイテッド戦。仙台は蔚山現代戦で手応えを得た4-3-3システムで試合に臨み、好調の武藤も先発で起用された。ところが、4-3-3は機能しなかった。3トップ両翼がサイドに張りすぎて、中央の赤嶺がおさめたボールを受ける選手が少なかった。また、この日の中盤の構成は角田がアンカーでその前に富田と梁を配置する布陣であったが、富田や梁が赤嶺の落としたボールに絡むという場面も少なかった。赤嶺と他の選手との距離感が遠く、赤嶺が孤立した。

そのため後半からは4-4-2に戻すと、すぐさま攻撃は機能し、太田のクロスから誘発したPKを梁が決めて先制。その後セットプレーで追いつかれて1-1のドローに終わった。後半は攻勢に転じ、多くのチャンスを決められなかったことは問題だったが、ひとまず4-4-2に戻せばいつもの連係は戻ってくること、新加入の石川直、和田の入ったDFラインが安定していたことは収穫と捉えて良いだろう。

■4-3-3に合った選手起用が必要

目下の課題は4-3-3システムでの戦い方の確立だ。このシステムで得点を取るには、3トップ中央に入る赤嶺もしくは中原と近い位置でボールを受けられる選手を起用する必要があるだろう。角田もしくはジオゴをアンカーに置いた状態では、先述の奥埜や藤村など、前線の選手と絡んでペナルティエリア内に入っていくのが好きな若手選手を起用するのも一つの策だ。もちろん富田や松下、梁との競争になるが、4-4-2の時とは適性が異なる可能性もあるので、若手選手にとってはチャンスだ。

また、ウイルソンや太田、武藤、そして新加入の佐々木が3トップ両翼の候補となるが、彼らもサイドに張るだけでなく、中に入って赤嶺や中盤の選手と絡んでいくプレーが求められる。

さらなる試行錯誤と選手間の競争により、4-3-3に合った選手が見出せれば、ACLでこのシステムは大きな武器となる。

今後チームはJリーグとACLを並行して戦う過密日程の苦しさを味わう。ケガ人や疲労が蓄積する選手が多く出ることが予想される中、武藤、奥埜、藤村ら若手の台頭はグループリーグ突破に向けて不可欠だ。今後のACLでの手倉森監督の選手起用、そして4-3-3システムをどう熟成させていくかが大いに楽しみだ。

■著者プロフィール
小林健志
1976年静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。ベガルタ仙台オフィシャルサイト・出版物や河北新報などでベガルタ仙台についての情報発信をする他、育成年代の取材も精力的に行っている。