2ちゃんねるによる名指し“転載禁止”警告でまとめサイトが消滅する?
6月4日、巨大掲示板サイト「2ちゃんねる」(以下、2ch)が、「第3者に迷惑をかけ謝罪しない人物に2chの著作物を使われることは、不利益が大きいため、下記のURLにおける2chの著作物の利用を禁止します」と、掲示板の書き込みを抜粋・編集して人気を得ていた「2chまとめサイト」の大手5サイトに対し、転載を禁止するとの文言をサイト上に掲載した。
すると、名指しされた『ニュー速VIPブログ』『ハムスター速報』『やらおん!』『はちま起稿』『オレ的ゲーム速報@刃』の5サイトは「終了します」「みんな……バイバイ……」などと書かれた謝罪文などを掲載した上、すぐに転載行為をストップした。
何が原因で、2chはまとめサイトを締め出したのか? ITジャーナリストの神田敏晶(としあき)氏に聞いた。
「名指しされた5サイトは、2chの書き込みを恣意(しい)的に編集したり、誤った情報を真偽の検証をしないまま速報的に載せたり、ひどいケースだと書き込み自体を捏造したりもしていました。また、そういった記事にクレームが来ても、特に謝罪するわけでもなく記事を削除するだけで、あとはだんまりを決め込んでいたため、問題視されていたんです」
なるほど。それが2chサイドがいう不利益か。
「2chは転載に関して原則自由なんですが、事実とは異なる記事を作成するサイトを見過ごすことはできなかったんでしょう。まとめサイトはアフィリエイトで利益を得ているところが大半なんですが、最近はまとめサイトの乱立が著しかったため、より多くのユーザーを自身のサイトに囲い込もうと、歪曲、事実誤認、捏造といった正確性に欠ける記事を垂れ流してしまっていたのだと思います」(神田氏)
今のところ名指しされた大手5サイトは転載行為をストップしている(6月6日時点)。だが、もしその警告を無視して、転載を再開したらどうなるのだろうか? ネット関連の訴訟に詳しい、小笠原六川国際総合法律事務所の神田知宏弁護士は次のように語る。
「2chの書き込みは運営側に著作権が帰属されるように規定されていますので、許諾のない転載行為は理論上、著作権侵害になります。2chに本気で法的措置を取られたら、まとめサイト側はかなり不利ですね」
じゃあ、今後、まとめサイトという媒体は消滅する?
「そんなことはないと思います。今回警告を受けた5サイト以外は、今までどおり転載しても問題ないということですからね。ですが、警告を受けた5サイトのような行為を行なうようであれば、今回同様に2chから警告を受ける可能性もありますので、今後は悪質なサイトはなくなっていくでしょう」(神田弁護士)
ほかのまとめサイトにクギを刺す狙いもあったということか。5サイトへの警告は見せしめだったのかもしれない。
「最近、2chと警察との協力関係が強まっているという印象があります。2chは削除要請などにも真摯に対応するようになってきているようですから、ひょっとすると、今回の5サイトへの警告は、警察側の『悪質なまとめサイトをなんとかしろ』という意向に沿ったものかもしれません」(神田弁護士)
カネに目がくらんでつくられたデマ記事に踊らされるのはまっぴらゴメンだが、一方で長々と書き込まれた2chの書き込みを要約してくれるまとめサイトが便利なのも事実。今回の警告を機に、掲示板内の意見を公平に抽出した、健全なまとめサイトが増えてくれることを望む。
(取材・文/昌谷大介[A4studio])