東京大学文学部哲学科卒で読売新聞社の主筆をしてこう言わしめるのだから、イチローの頭脳の明晰さは推して知るべし、だろう。
 「渡辺会長が実際に期待しているのは、長嶋氏に代わる球団取締役。巨人軍はOB以外の監督は難しいが、球団社長は別。他球団出身者でも経営センスがあり、メジャー経験もあるイチローなら問題はない。メジャーに人材が流れ、日米プロ野球の交流が急速に進む時代は、長嶋さんや王さんでは太刀打ちできない。イチローも監督には興味がないが、球団経営には魅力を感じているようです」(ベテラン巨人担当記者)

 イチローは'01年の入団以来マリナーズ一筋。こだわった理由は、'92年から同球団の筆頭オーナーが任天堂に代わり、イチローは山内溥相談役(元社長)とともに、米国のニンテンドーの発展に寄与してきたからである。その任天堂が昨年来のドル、ユーロ安とニンテンドー3DSの売り上げ不振で大打撃を受けている。'12年3月期の連結営業損益は450億円の赤字が見込まれ、'81年以来初めての経営赤字が確定的だ。
 「ゲーム機の主流が、任天堂が得意とする家庭型から携帯電話型に急速にスイッチしてきたのです。横浜ベイスターズを買収したDeNAやGREEの携帯電話型はいまや日の出の勢い。一方、家庭型は4年連続の減少で、ピークだった'07年の3分の2まで縮小している。その流れをいち早く読んだイチローは任天堂からの撤退を図り、読売グループに新天地を見出そうとしているのでしょう」(イチローと親しい放送関係者)

 今回の日本開幕戦で、2日間で延べ9万人弱のファンを東京ドームに呼び込んだイチローの人気と実力を再確認した渡辺会長は、巨人への取り込みを画策している、との情報もある。
 「トレードの最終期限は7月末。その時点でマリナーズがア・リーグ西地区の優勝争いから脱落し、巨人が混戦を抜け出せないようならイチローを金銭でトレードしようというのです。任天堂にとっても万一DeNAベイスターズが中畑効果で優勝なんてことになれば、ゲーム機の売り上げにも影響を及ぼす。よろこんで巨人に送り出すでしょう。イチローにしてもキャリアの最後を巨人で飾り、しかるべき時期に球団社長就任となればいい話。要はナベツネさんがミスターに見切りを付け、後継者には松井秀喜ではなく、イチローを選んだということなのです」(スポーツ紙デスク)

 将来的にはア・リーグの優勝決定戦で、「西・東・中地区の各優勝チームに混じって日本のセ・リーグ勝者を組み込む」という遠大な構想がぶち上げられているが、その指揮をイチローが執る日も、そう遠くないかもしれない。