観戦の動機は単純だった。
JFLの有力チームを見たい。

8月31日なら他の日程と重ならない。
青春18きっぷを活用できる。
「8月4日」以前から松本に行く予定を入れていた。

松田直樹選手の死去は今も実感が沸かない。
私は特定の選手に思い入れる観戦者じゃない。
マリノスサポでもない。
ただ自分がサッカーに目覚め、
育成年代への興味を深める過程で、彼は常に目線の先にいた。

U-17からフル代表まで10年以上の年月でだった。
同学年という仲間意識もある。
そういう存在が消えたことは今も消化できない。

JFLは震災の影響で開幕が遅れた。
序盤の6節が順延となり、試合の順番が前後している。
ちょうど中盤戦に差し掛かった頃合だ。
7月上旬に横河を観たに時は10チームが勝点4に収まる大混戦だった。

今は首位と10位の勝点差が「13」まで散らばっている。
首位SAGAWA SHIGA FCが7月以降の8試合で7勝と好調だ。
松本山雅FCは18試合を消化して勝点27の8位。
首位との勝点差は12。2位のライバル長野とも勝点8の開きがある。
J昇格を狙うクラブとしては物足りない戦果だ。
ただチームには明るい材料もある。
山雅は日曜の天皇杯長野県予選決勝で長野パルセイロを下した。
延長後半ロスタイムに追いつき、PK戦の末に代表権を勝ち取っている。
監督は元ヴェルディの加藤善之氏。

吉澤英生監督の解任に伴って6月に就任している。
FC琉球は前期10戦を終えた時点で7勝3敗。
首位争いに絡む好成績だった。
ただその後2勝1分4敗と低迷。
現在は勝点28の7位に位置している。
監督は新里裕之氏。31才の青年監督だ。

アルウィン訪問は6年前の川中島合戦以来だ。

日本最高レベルの球技場だけどアクセスは苦しい。
最寄り駅で徒歩40分というレベルだ。
松本駅近くのバスターミナルからシャトルバスが出ていた。
18時発に乗車したら、7分前に発車して驚く。
ほぼ満員になったけどまだ何人か乗れたし…。
のんびり夕食を食べてぎりぎりに乗り場へ着いたら、
俺はサッカー観戦難民になっていた。
私のような「一見さん」への配慮もお願いしたいところである。
運賃は片道500円。他のスタジアムに比べてかなり高い。

ただ行きは40分も掛かったので、妥当な値付けなんだろう。
スタジアム周辺の道路があまり整備されていない。
1万、2万と集まれば大渋滞が起こってしまいそうだ。
今日は平日夕方なので帰宅ラッシュとも重なっていたかな?
「道路事情」は集客に関する一つの課題だろう。


松本山雅FC
GK  1 石川扶   84.07.02 178/70 FC刈谷
DF 23 多々良敦斗 87.06.23 180/72 静岡産業大

    4 飯田真輝  85.09.15 185/80 東京ヴェルディ
   28 飯尾和也  80.04.10 177/69 横浜FC
   16 鐡戸裕史  82.09.28 168/65 サガン鳥栖
MF 20 須藤右介  86.05.07 183/74 横浜FC
    8 弦巻健人  87.06.29 172/64 東京ヴェルディ
   13 木島徹也  83.08.20 177/72 沖縄かりゆしFC
   27 大橋正博  81.06.23 168/65 江原FC
   32 船山貴之  87.05.06 170/69 栃木SC
FW 33 木島良輔  79.05.29 166/66 町田ゼルビア


−−−−−−-木島良-−−−−−−
−−船山−−−大橋−−-木島徹-−
−−−−−須藤−−弦巻−−−−−
−鐡戸−−飯尾−-飯田−-多々良−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−石川−−−−−−−

FC琉球
GK  1 森本悠馬  82.07.26 175/71 アローズ北陸

DF  6 國仲厚助  82.01.17 173/71 沖縄かりゆしFC
   17 大澤雄樹  83.04.07 183/75 横河武蔵野FC
    5 伊藤竜司  90.07.23 186/82 横浜FC
   15 初田真也  84.04.07 186/78 カマタマーレ讃岐
MF 27 上里琢文  90.04.29 174/70 京都サンガ
    7 寺川能人  74.09.06 181/65 湘南ベルマーレ
    8 松田英樹  81.09.02 172/60 TDK SC
   16 新川織部  88.07.16 168/63 名古屋グランパス
   11 高橋駿太  81.02.09 175/68 栃木ウーヴァFC

FW  9 我那覇和樹 80.09.26 182/77 ヴィッセル神戸

−−−−−−-我那覇-−−−−−−
−-高橋−-新川−−松田−-寺川-−
−−−−−−−上里−−−−−−−
−初田−−伊藤−−大澤−−國仲−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−森本−−−−−−−


松本山雅は新加入選手を3名起用している。

船山貴之が7月末、飯尾和也と大橋正博は8月の加入だ。
飯尾と大橋はリーグ戦初先発である。
なお石川扶は石川直宏の弟。
木島良輔と木島徹也は兄弟だ。
ヴェルディ、流経大出身者が多いのは柴田峡コーチの縁かな?

山雅の布陣は4−2−3−1。
前線に木島兄弟、船山と突破・裏取り系を並べた。
中盤は大橋正博、弦巻健人が配球担当。

須藤右介がアンカーとしてリスク管理を担う。
琉球の布陣は攻守ともかなり流動的だった。
守備は中盤をフラットにした「4−4−2」が基本形だ。
攻撃時も前線が2トップ状態になることが多い。
高橋駿太、新川織部、松田英樹が顔を出していた。
彼らが中に絞ると、SBが高く張り出している。
変幻自在に人とボールを動かす理想が見えた。

ただお互いに現実のギャップは否めない。

山雅、琉球とボールを動かして崩すコンセプトだ。
しかし「ボールを走らせて足を休める」技術がない。
人数を掛けて崩すフィットネスもない。
「大きく蹴る」「後ろで動かす」場面がどうにも目につく。
序盤は一発狙いのパス、シュートも多かった。
これは積極性の現れでなく手抜き、逃げの選択だ。
ピッチ状態も影響していたと思う。
芝がかなり禿げて、凸凹もありそうだった。
だから「ギリギリのパス」は狙いにくい。

アルウィンはピッチが掘り込み式。
スタンドは完全箱型でピッチから近い。角度も急だ。
観戦には最高だけど、風通しが悪くなる。
豊田スタジアムの同じ欠点ですね。

19分、琉球は寺川能人が右から折り返す。
我那覇和樹がエリア内でボールを抑えて左に落とす。
高橋駿太は中に踏み込んでシュートを狙った。
山雅DFがブロックする。


25分、山雅は木島良輔が右に開く。
多々良敦斗が攻め上がって折り返す。
木島徹也はエリア内で潰れる。
鐡戸裕史がセカンドに反応して右ミドルを狙った。枠外。

32分、山雅は船山貴之がエリア内から落とす。
木島良輔がゴール右から仕掛けてシュートを狙った。
GK森本悠馬がブロックして枠外。


34分、琉球は上里琢文に警告。
木島徹也に危険なタックル。

試合は次第に山雅ペースとなる。
弦巻健人が攻撃のテンポアップを引き出していた。
彼の縦にワンタッチで当てるクサビが有効。
早くて細かいパスワークからチャンスが生まれていた。

41分、山雅はボランチがクサビを当てる。
木島徹也が1タッチで左に落とす。

大橋正博はやはり1タッチで左に叩く。
船山貴之が右ミドルを狙った。
ゴール左隅を捉えたけどGK森本悠馬がブロックして外。

44分、琉球は新川織部に警告。

45分、山雅は大橋正博が右サイドから折り返す。
木島良輔がいい体勢で走り込んで競り勝つ。
弦巻健人はセカンドを左に上手く落として…。
船山貴之がフリーでボレーを叩き込んだ!

<松本山雅FC 1−0 琉球FC>

松本山雅がアディショナルタイムに勝ち越して前半は終了。
試合は1−0で後半に入る。

45分、琉球は新川織部→三澤純一。
三澤は筑波大、仙台でプレーして今年から琉球入り。
一言で評するなら「天然ドリブラー」である。
布陣がこうなった↓
−−−−−−-我那覇-−−−−−−

−-高橋−-上里−−松田−-三澤-−
−−−−−−−寺川−−−−−−−
−初田−−伊藤−−大澤−−國仲−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−森本−−−−−−−


57分、琉球は國仲厚助が右から折り返す。
我那覇和樹がポストに入って落とす。
國仲がエリア内に突っ掛けてこぼれた。

三澤純一がセカンドを拾ってエリア右から仕掛ける。
三澤はスラロームでDFをいなしてシュートを狙う。枠外。

62分、琉球は上里琢文→田中靖大。
田中は柏U-18出身の23才。
山本紘之(現日テレアナウンサー)と同期だった。
布陣がこう↓
−−−−−−-我那覇-−−−−−−
−-田中−-高橋−−松田−-三澤-−

−−−−−−−寺川−−−−−−−
−初田−−伊藤−−大澤−−國仲−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−森本−−−−−−−


63分、琉球は松田英樹に警告。
弦巻健人に対する対応。

66分、琉球は中盤のボール奪取からカウンター。
松田英樹が縦に当てる。

我那覇和樹は右後ろに落とす。
三澤純一の右足ミドルは枠外。

68分、山雅は木島良輔→片山真人。
おおガンバユースの片山か(笑)
片山がそのまま1トップの位置に入る。

69分、山雅は片山真人が左から中に当ててスプリント。
大橋正博がいい間を作ってスルーパスを入れる。
片山はエリア左にいい体勢で抜け出した。

しかし片山はコントロールを乱して打ち切れない。

71分、琉球は田中靖大に警告。
弦巻健人を背後から手で押した。

76分、琉球は松田英樹→小寺一生。
琉球の最終布陣がこう↓
−−−−−−-我那覇-−−−−−−
−-田中−-高橋−−國仲−-三澤-−
−−−−−−−寺川−−−−−−−

−初田−−伊藤−−大澤−−小寺−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−森本−−−−−−−


76分、琉球は寺川能人が警告。
弦巻健人の顔に手が入った。
今日は弦巻絡みのイエローが3枚目かな?
受難というべきか、上手く誘ってたというべきか…。

77分、山雅は大橋正博が右サイドからのFKを入れる。

片山真人がフリーでヘッドを合わせるもGKの正面。

84分、山雅は木島徹也に警告。
寺川能人の腕を引っ張った。

86分、山雅は木島徹也→今井昌大。
88分、山雅は船山貴之に警告。

アディショナルタイムの提示は3分。

92分、山雅は弦巻健人→渡辺匠。

山雅の最終布陣がこう↓
−−−−−−−片山−−−−−−−
−−船山−−−大橋−−−今井−−
−−−−−須藤−−渡辺−−−−−
−鐡戸−−飯尾−-飯田−-多々良−
−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−石川−−−−−−−


試合はそのままタイムアップ。

松本山雅が1−0でFC琉球を下した。

山雅は高速アタッカーが琉球の大型DFをかき回した。
木島良輔の突っ掛けは今も健在である。
彼のゴリゴリ突破がまず攻撃のアクセントだ。
ただ一発で抜け出すのは難しい。
しかし今日は同じタイプの併用が奏功。
木島良輔が使う側に回る場面も多くて…。
お互いに生かしあう連動の関係が生まれていた。

早いテンポでボールを放せばDFは寄せ遅れる。
急だけでなく「緩」もあった。
大橋正博はタメを作って最適なタイミングを待つことができる。
彼が中盤の底、サイドと自在に動いてボールに絡んでいた。

試合の観衆は6,228名。
単に人が多いだけでなくリアクションが熱い。
盛り上がりは想像以上。現場で味わって驚いた。
メディアも試合後の会見に20人くらい出ていた。

ピッチ外は既にJ2レベルである。
ただ他クラブの例をみると問題は「昇格後」だ。
J2に上がれば相手のレベルが上がる。
せっかく縁ができた選手も残れるのは半分以下だろう。
目先の勝ち負けを追い求めるファンはストレスだけが溜まっていく。
スタジアムの雰囲気は悪くなり、客が遠ざかる。
そういう「負のサイクル」にはまると抜け出すのは大変だ。
クラブ、サポーターが「もっと大きな目標」を共有する必要がある。
どういうサッカーをするか?どういうクラブを作るのか?

山雅に何か問題が起こった時に立ち戻れる「原点」はあるかな?

この試合で残念だったのが両チームの「お芝居」だ。
審判にファウルを大げさにアピールする選手が多くて驚いた。
JFLはあれに引っ掛かるレフェリーがいるのかな?
Jの審判なら見え見えの演技は逆効果になります。

最後に試合後の会見要旨。
★新里裕之・琉球FC監督監督:
●振り返り

僕らは相手と関係なく、自分たちのスタイルを目指す。
攻守両面でアグレッシブにやる。試合前はそれを選手に伝えた。
立ち上がりは自分たちのリズムで運べる時間が多かった。
ただその後はプレスを受ける時間が増え、
ほころびが生まれ、カウンターから失点をしてしまった。
強さを蓄える材料として、敗北を次につなげたい。
山雅のサポーターから情熱、一体感を感じた。
それは続けていって欲しいし、僕らも見習いたい。


●3連敗&3戦無得点
フィニッシュが入らないことに尽きる。
ただ僕らは3連勝もしている。
1敗・1勝にこだわらず、目の前の試合を大事にしてたい。
「自分たちのサッカーに近づく」ことが最優先だ。

●リザーブ5名
もちろん7名に比べれば駒は少なくなる。
ただ選手からも不満は出ていない。

与えられた環境の中でポジティブに取り組んで行きたい。

●山雅のストロングポイント
20番の須藤右介(主将)ですね。
彼が指揮官として際立っていた。
チームが急ぎ目、ナーバスになるかな?
という部分を彼がコントロールしている。
攻撃的に戦うには、
バランスをとって精神的に強くさせてくれる存在が大事。

須藤ははそういう存在で「チームの心臓」だと思った。

★加藤善之・松本山雅FC監督:
●振り返り
新しい選手が何人か起用した。
初めてとしてはいい入り方ができたと思う。
前半は前線からのプレスに押される時間があった。
ただ大橋正博、弦巻健人にボールが収まり、、
自分たちの形が作れるようになって、得点が生まれた。

新しいこと、難しいことを求めている訳ではない。
大橋、弦巻という配球できる選手が、
木島良輔、木島徹也、船山貴之を活かす。
そういうイメージで攻撃の準備をした。
ある程度の形ができたと思う。
8月は精神的、身体的にコンディションを整えるのが難しかった。
日曜にはダービーもlあった。
そういう中で選手はよくやってくれている。


●新戦力3名の評価
船山貴之は点が取れたことで
気持ちを落ち着かせて次のゲームに入れると思う。
フィニッシュを期待しているので、シュートの精度を高めて欲しい。
大橋正博は実績があり、独特のテンポでボールを動かせる選手だ。
周りが彼を理解すれば良さは引き出される。
過去に一緒にやってきた選手もいて、すぐチームに馴染んだと思う。
飯尾は守備をコントロールする、コーチングする能力がある。
誰と組んでもしっかりやれると思う。

マツ不在のチームで、精神的支柱として、
最終ラインのバランスをとってほしい。

●選手起用
(中2日だけどメンバーの入替は一人だけだった)
準備の段階ではもう少し点が来るという思惑があった。
大橋正博のところはこれからマークが厳しくなるだろう。
起用は対戦相手を見ながら考えていきたい。
失点をせず、守備の連携が確認できたことは良かった。


●攻撃陣の編成
センターフォワードに誰を置くかでチームが変わってしまう。
感性の似た選手を並べると、今日のようなサッカーができる。
ただ皆に同じプレーを要求するつもりはない。
今日のスタメンだと高さがないから、セットプレーに弱さが出る。
このバランスが必ずしもいいとは思ってない。

●前半のミドルシュート
あまり期待していない部分だった。

打つことでDFラインが下がるということはある。
ただ今日の並びは背後へのスルーパスを意識していた。
しっかり確実にゴールを決められる崩しができればよかった。