■ ファイナル

女子W杯の決勝戦。準決勝でスウェーデンを3対1で下して初の決勝進出となったFIFAランキング4位の日本が、世界ランキング1位のアメリカと対戦。日本は、過去、アメリカとは24試合を戦って「0勝21敗3分」と勝利がない。日本サッカーにとっては、FIFA主催の世界大会で決勝まで進むのは4回目で、初の世界チャンピオンを目指す。

日本は「4-2-2-2」。GK海堀。DF近賀、熊谷、石清水、鮫島。MF阪口、澤、大野、宮間。FW川澄、安藤。スウェーデン戦で2ゴールを挙げたFW川澄が2試合連続スタメンで、FW永里はベンチスタート。ドイツ戦で決勝ゴールを決めたFW丸山、18歳のMF岩渕らがベンチスタートで出番を待つ。

対するアメリカは、181cmのFWワンバックが攻撃の中心で、3試合連続ゴールを決めている要注意の選手で、GKソロもワールドクラスのGKと評価されている。

■ 死闘の末・・・

試合の序盤はアメリカペースとなる。日本はやや動きが重くて、アメリカに中盤を制されてしまう。立ち上がりの20分ほどはアメリカが猛攻を仕掛けて、いつ先制ゴールが決まってもおかしくない展開になる。しかし、この時間帯は日本に運も味方して、FWワンバックのシュートがクロスバーに当たるなどゴールを許さない。ただ、日本も中盤のMF澤のところが狙われて、ボールを失うケースが目立ってリズムをつかめなず、0対0で前半を折り返す。

後半も開始からアメリカがペースを握る。日本は後半21分にMF大野とFW安藤に代えて、FW永里とFW丸山を投入。流れを変えようとするが、逆にアメリカが、後半24分にロングボールから途中出場のMFモーガンが決めて先制する。

ビハインドとなった日本だったが、後半36分にゴール前で途中出場のFW永里とFW丸山が絡んで相手のクリアミスを誘うと、最後はゴール前に入っていたMF宮間がうまく左足のアウトサイドで流して同点に追い付く。MF宮間は大会2ゴール目。試合は1対1のままで15分ハーフの延長戦に突入する。

延長戦は互角の展開となる。日本もリズムよくボールを回すシーンも出てくるが、延長前半終了間際にアメリカが波状攻撃を見せると、最後は左サイドからのクロスを181?のFWワンバックが得意のヘッドで決めて2対1と勝ち越しに成功する。FWワンバックは4試合連続ゴールで、MF澤に並んで得点ランキングでトップタイとなる。

追い詰められた日本だったが、ここから「なでしこ魂」を発揮する。終了3分前の延長後半12分に左サイドのコーナーキックを得ると、MF宮間の蹴ったボールをニアサイドでMF澤がボレーで決めて、再び、同点に追いつく。MF澤は2試合連続ゴールで,、今大会5ゴール目。FWワンバックを突き離して得点ランキングでも単独トップに立つ。

日本は、最後の交代カードでMF岩渕を投入。勝負に出るが、逆に終了間際にFWモーガンに抜けられて大ピンチを招く。このプレーでDF石清水がレッドカードを受けて退場。ゴールやや右寄りの絶好の位置でアメリカがフリーキックを得る。「決まればアメリカの優勝」となるラストプレーだったが、なんとか守り切って、延長戦も2対2で終了し、PK戦に突入する。

そのPK戦では、日本の守護神のGK海堀が奮闘。アメリカの1人目、3人目をファインセーブし、アメリカは最初の3人が連続で失敗してしまう。対する日本は、2人目のFW永里が失敗するが、1人目のMF宮間、3人目のMF阪口、そして、4人目のDF熊谷が決めて3対1でPK戦を制し、日本は初のW杯制覇を成し遂げた。

■ 劇的な勝利

延長戦で警戒していたはずのFWワンバックに決められて1対2となって、残り時間が数分となったときは、「もはやこれまでか・・・。」と思ったが、日本にはMF澤というスーパーな選手がいて、2対2の同点に追いついた。

PK戦は運次第の要素が強いが、こういう展開になると、追いついた日本の方が心理的にも優位に立てるもので、PK戦の前の日本の選手達のリラックスしているかのような「いい表情」を観たときに、勝利の可能性が高いのでは?と感じた。

試合前は、互角の展開になるかと思っていたが、実際に試合が始まってみるとアメリカが優勢で、アメリカの方が決定機ははるかに多くて、日本らしさが発揮されたシーンは多くなかった。アメリカはさすがにFIFAランキング1位のチームで、現時点では、10試合対戦すればアメリカが日本を上回るのは間違いないところであるが、なでしこの勝負強さと執念が勝利をもたらした。

■ 佐々木監督の選手起用

今大会はグループリーグで3戦目のイングランドに敗れた影響もあって、決勝トーナメントでは、ドイツ、スウェーデン、アメリカと対戦することになった。FIFAランキングでは、2位、5位、1位のチームなので、厳しい戦いが続いたが、見事に3連勝。誰も文句の付けようのない展開で、世界チャンピオンとなった。

決勝戦は劣勢で、日本は疲れもあったのか、この試合は序盤から動きが重かった。立ち上がりに何度も決定機を作られたので、この時間帯でアメリカが確実にチャンスをものにしていたら、大差での敗戦もあり得たが、日本はGK海堀のファインセーブと少しの運に救われた。出来の良くなかった前半を0対0で終えることができたのは大きかったといえる。

ドイツ戦、スウェーデン戦と冴えを見せた佐々木監督の采配はこの日もヒットし、MF宮間の同点ゴールは途中出場のFW永里とFW丸山のコンビがチャンスメークしたが、0対1とビハインドとなってからも、無理して攻撃的な選手を投入しなかったことも、延長戦を落ち着いて戦えた要因である。試合後は、必ず、「選手たちが頑張ってくれた。」というコメントを残す佐々木監督だが、大会を通して辛抱強い采配を見せた。

■ MF澤のための大会