鉄鉱石、金、プラチナなどの資源価格が軒並み高騰している。1年前と比べて、2〜3倍になる。投機マネーが大きく動いた2008年春の急騰と違って、今回は中国などの新興国の成長や米経済の回復などの実需によるものとされる。

   ただ、石油や鉄鋼など資源高が企業の収益に大きく影響する業界からは、「物価上昇につながるのではないか」と懸念する声も漏れている。

欧米サーチャージは7000円から1万500円

   東京工業品取引所(TOCOM)によると、金は2009年初に1グラム2600円程度だったものが、10年4月には3500円前後で推移。プラチナは同2800円から5000円超。パラジウムは590円が1500円を超えている。

   連日上昇が伝えられる原油価格は1キロリットル2万8000円台が約5万円になり、ゴムも1キログラム140円から450円へと上昇。「どれも1年前より2〜3倍に上昇した」(TOCOM)という。

   リーマン・ショック後の世界的な景気悪化で、08年の高値から09年は一たん下落したものの、米国経済が回復の兆しをみせ、中国経済も好調を持続し、「資源需要が増えることへの期待が大いに高まっている」ことが、資源価格の高騰につながっている。

   1キロリットルで5万円を付けている原油価格。TOCOMで取り扱うガソリンや灯油もこれらに連動して上昇。TOCOMは「おおよそだが、ガソリンや灯油は原油より1万円高い水準になる」と説明する。

   こうした石油製品は、すでに値上げが始まっていて、石油情報センターによると、4月19日時点のガソリン価格は全国平均で135円20銭。前週と比べて2円も上がり、これで7週連続の上昇となった。

   航空機の燃油サーチャージも、日本航空や全日空は4月1日の発券分から、日本−米国・欧州間などで7000円から1万500円に値上げした。

鉄鉱石大幅値上げで鉄鋼連盟会長の懸念

   日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日本製鐵社長)は2010年4月21日の記者会見で、今年度の鉄鉱石の輸入価格が値上がりする見通しであることを受けて、「自動車大手などへの鋼材価格への転嫁を進めるが、難航しそうだ」との見方を示した。

   同連盟の調べでは、鉄鉱石の価格は08年12月の1トンあたり114ドルをピークに09年は下落。2010年1月は同74ドル、2月は同76ドルの水準で推移している。ただ、これは「09年度分の価格交渉の結果として、値下げした価格が持ち越されているだけのこと。漏れ聞いているところでは、10年度は1トンあたり200ドルというのだから、上昇トレンドにあることは間違いない」と話している。

   第一生命経済研究所の嶌峰義清・主席エコノミストは、「基本的に、消費者の所得は伸びておらず、デフレ期待の傾向は変わっていない。たとえば、燃油サーチャージ分を旅行代金に転嫁できない旅行代理店はかなりの痛手だし、トラック輸送も値上げとなるので、これをスーパーなどがどこまで吸収できるのか、ガマン比べになる」とみている。悪いことに、天候不順によって野菜の価格が高騰。限られた生活費が「食」に回って、ますます工業製品は売れなくなる。商品を売るために企業は、利益を圧縮してでも資源高を吸収する必要がある。

   多くの企業トップが「10年後半くらいから業績が回復する」と予測していたが、資源高が足を引っ張りそうだ。

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