三井物産のBSデジタル放送戦略 ぶち上げた多チャンネル化の多難
絵に描いた餅で終わってしまうのでは――。参入希望が殺到している次期BSデジタル放送をめぐり、三井物産の戦略が物議を醸している。
アナログ放送が終わる2011年7月以降、総務省はBSデジタルで新たに8〜12事業者に免許を認めると見られる。このほど、同省が参入の希望調査をしたところ、放送局や総合商社など国内外から53もの事業者が名乗りを上げた。
この際、大半の事業者が現行の放送方式での参入を希望したのに対し、三井は大幅なチャンネル増が可能となる新方式「H.264」の導入を打ち出したのだ。
ところがこの「H.264」、既存のBSデジタルの受信機では視聴できないという厄介な代物なのだ。
新たな受信機が必要になることから、関係者は実現に懐疑的だ。参入希望のある放送事業者は「ゼロからの普及となると、獲得できる視聴者はたかが知れている」と手厳しい。
三井の関係者は「視聴者の視点に立てば賛否ある」と認めつつも、「BSデジタルを魅力的な媒体にするには、いつかは導入しなければいけない」と主張する。
確かに現行のBSデジタルが退屈な通信販売番組や再放送で溢れているのも事実だ。また三井は受信機の問題については電機メーカーに協力をあおぐ方針だという。
最終的に導入の是非を決定する立場の総務省は「どれだけ魅力的なコンテンツが集まるかがカギ」との見方を示している。
放送方式は来春には決まる予定で、これから番組供給者、メーカーと連携体制を整え攻勢をかけたいところだ。が、4000万台を突破した既存受信機を捨てさせるだけのキラーコンテンツや価格戦略がなければ成功はおぼつかない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介 )
■関連記事
・BSデジタル新規参入に応募殺到! カネよりも知恵を絞れば経済は活性する【町田徹コラム】
・3年後のアナログ停波は本当に可能か?これだけある「地デジ移行」の問題点
・2010年のデジタル大激変でテレビ局の利権構造は崩壊する
・テレビ通販に「2011年問題」 総合商社が相次ぎ新戦略
・電波塔の役割を終える東京タワーが「観光」で生き残る道