タクシーは法人タクシーと個人タクシーに二分されますが、利用者にとってはどのような違いがあるのでしょうか。経験を積んだベテランでもある「個人」を利用したい場合、どうすればよいのでしょうか。

「個人」といえども配車センターから配車される

 タクシーには大きくわけて、会社所属の「法人タクシー」と、個人営業の「個人タクシー」があります。


東京で全個連系の組合に属する個人タクシーは、車体色が白地に青いラインで、「でんでん虫」の行灯がついている(画像:Pumidol Leelerdsakulvong/123RF)。

 個人タクシーは車体や屋根上の行灯に「個人」と書かれていますが、料金などは一般的な法人タクシーと同じで、利用するぶんにはあまり変わりがないかもしれません。しかし、使用している車種は、法人タクシーでは見られない珍しいものも。一般的なコンパクトカーもあれば、レクサス、ベンツといった高級セダン、なかには日産「エクストレイル」のようなSUVまでもが、個人タクシーの行灯を付けていることがあります。

 全国個人タクシー協会によると、全タクシー台数の約16%が個人タクシーとのこと。法人タクシーとの違いを同協会に聞きました。

――個人タクシーの車両は、法人タクシーと何が違うのでしょうか?

 まず天井の行灯が違います。法人タクシーの場合は会社ごとですが、個人タクシーは、それぞれが所属する組合の行灯をつけています。組合は大きくふたつあり、全個連(全国個人タクシー連合会)系のタクシーは「でんでん虫」、日個連(日本個人タクシー連合会)系のタクシーは「ちょうちん」の行灯です。

 組合によって車体色もちがい、東京では「でんでん虫」のグループは白地に青いライン、「ちょうちん」のグループはラインなしの白塗り、場所によっては黒塗りも認められています。ほかの地域では色の決まりも様々で、全個連や日個連以外の組合、あるいは特定の組合に所属しないタクシーでは、さらに異なってきます。

――使用する車両はドライバーが自由に選べるのでしょうか?

 乗車定員10人以下の車両であれば基本は自由です。昔はセダンがほとんどでしたが、いまはワンボックスなど様々な車種が見られます。しかし、組合によっては大きさなどに一定の基準を設けていることもあります。理由は、組合のタクシーチケットを扱うにあたって、一定レベルの車両が求められるためです。

――運賃の違いはありますでしょうか? 配車はできるのでしょうか?

 運賃は地域で法人タクシーと同じ体系に揃えています。タクシーチケットは、法人タクシーでは会社ごとに用意されていますが、個人タクシーではお話したように組合のなかで共通のものがあります。配車についても、組合で配車センターを設けており、近くにいるクルマを無線で配車させています。

個人タクシーは選ばれし存在

――ドライバーは「個人」と「法人」でどう違うのでしょうか?

 かんたんにいうと、個人タクシーは法人タクシーで10年以上経験を積み、試験を受けて認可された人だけが開業することができます。そのあいだも無事故無違反でなければいけません。法人ドライバーは売り上げを会社に収めて給料をもらいますが、個人タクシーは個人経営者なので売り上げもすべて自分のものです。ただし、車両の購入や整備費、ガソリン代なども自分で負担することになります。

 さらに当協会で、「マスターズ制度」と呼ばれる優良個人タクシー事業者の認定制度を設けており、車両の屋根上や行灯に星のマークを表示しています。ひとつ星から始まり、1年間無事故無違反で諸条件をクリアすればふたつ星に昇格、同様にしてさらに昇格すると、個人タクシーの最高ブランド「マスター称号」として3つ星を車両に表示することができます。しかし、事故などを起こすと降格もあります。

――個人タクシーを「つかまえるコツ」などはありますでしょうか?

 これといったことはありませんが、都内では中心部のほうが個人タクシーは多いでしょう。ドライバーが郊外に自宅兼営業所を構えていることがありますが、たとえばその近くに住んでいる人が、(組合を通さず)そのドライバーに直接依頼してもOKです。


日個連系の組合に属する個人タクシーがつけるちょうちん行灯(乗りものニュース編集部撮影)。

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 ちなみに、個人タクシーではあるものの、大手法人タクシーのブランドを冠して運行している事業者も。「kmタクシー」として知られる国際自動車が2015年から「km提携個人タクシー」制度を実施しており、その提携事業者はkmタクシーの行灯を付け、kmタクシータクシーチケットを共有しています。

「個人になったときに不安を感じているドライバーへの働き方の提案として始めました。当社としては、新卒採用のドライバーに対しキャリアパスのひとつとして独立の支援をしており、提携の個人タクシー事業者に勉強会の講師になってもらうなどして、その具体像を示すことができます」(国際自動車)

 国際自動車はこの取り組みを進めるものの、「既存の組合を脅かすことがあってはならない」といい、基本的には同社OBの個人タクシーに声掛けをしているとのこと。2018年10月現在で4事業者と提携しているといいます。

【写真】新スタイル? 法人の行灯を付けた個人タクシー


法人タクシー大手の国際自動車と提携した「km提携個人タクシー」第一号の小川タクシー。kmタクシーの行灯をつけて運行する(画像:国際自動車)。