缶ビール代が浮く「新幹線のおトクな乗車法」
飲み物だけでなく、駅弁が買えるほど旅費が浮くことも。新幹線をおトクに活用して秋の旅を楽しもう(写真:T2 / PIXTA)
スマートフォンと交通系ICカードの普及で「新幹線に乗るなら『EX予約』や『モバイルSuica』を利用するのがおトク」ということが、常識となりつつある。
窓口に並ばず、スマホを操作するだけで予約ができ、乗車するときは、登録している交通系ICカードを改札タッチするだけ。そのうえ、料金が割引となるのだから、新幹線のヘビーユーザーにとっては便利なサービスだ。
だが、時刻表のピンクのページに掲載されている運賃表をよーく読み込んでいくと、この割引に、もう一工夫するだけで、さらにおトクに新幹線に乗車できることがわかる。
新幹線に「さらに安く」乗る
そこで、時刻表で発見した、新幹線に「さらに安く」乗車する方法を紹介。「EX予約」や「モバイルSuica」を使ったことがない方でも、みどりの窓口や、駅の特急券券売機で簡単にできる方法だ。
トクする乗車法 その1
上野を活用しよう(北海道・東北・秋田・山形・上越・北陸新幹線)
東北新幹線が東京まで延伸開業したのは1991年のこと。都心部を貫く区間で建設費がかかったことから、東京―上野間を乗車する場合、通常の特急料金に210円の特別加算料金がかけられることになった。
この加算料金は開業から27年経過した現在もかけられ続けている。たとえば、はやぶさで仙台へ行く場合、東京からは1万1200円で上野からは1万0990円、かがやきで金沢へ行く場合、東京からは1万4120円で上野からは1万3910円(いずれも通常期の価格)、といった感じだ。
上野の新幹線ホームは地下4階にあるので、東京と比べて在来線からの乗り換え距離は長くなるが、乗り換え通路を行き来する人の数は東京より少ない。また、地下ホームにあるため、夏は冷房、冬は暖房が効き、新幹線を待つ時間も快適。さらに、上野東京ラインの開通で、川崎・横浜方面へのアクセスも良くなった。
混雑するシーズン、自由席に乗車する場合は、始発駅の東京を利用するべきだが、「新幹線=東京から乗る」という単純な理由で、東京を利用している場合は上野を利用することを検討してもいいだろう。
ちなみに、モバイルSuicaの「スーパーモバトク」を利用した場合は、上野で乗り降りした方が東京より160〜190円安くなる。
トクする乗車法 その2
「ひかり」「さくら」「はやて」を上手に使おう(東海道・山陽・東北新幹線)
東海道・山陽新幹線の「のぞみ」、山陽・九州新幹線の「みずほ」、東北・北海道新幹線の「はやぶさ」、東北・秋田新幹線の「こまち」の指定席は、ほかの列車よりも速いことから、加算料金がかけられている。
東京ー名古屋の場合「ひかり」や「こだま」より、「のぞみ」の指定席の方が210円、新大阪―博多の場合「さくら」「ひかり」「こだま」より、「のぞみ」「みずほ」の方が310円、東京―仙台の場合「はやて」「やまびこ」より、「はやぶさ」「こまち」の方が310円、それぞれ高くなっている。
この程度の価格差なら、早く到着する電車に乗った方がいいと考えてしまいがちだが、時刻表を見ると、「のぞみ」「みずほ」に抜かれない「ひかり」「さくら」が走っている。
新大阪→熊本・鹿児島中央を結ぶ「さくら」の定期列車(毎日運転の電車)は、博多までの間で「のぞみ」に追い越されることはない(逆方向の「さくら」の一部は、「のぞみ」に追い越される)。
また、東京を7時33分〜19時33分の間、毎時33分に出発する「ひかり」は、名古屋まで「のぞみ」に追い越されない。逆方向の名古屋を8時26分〜20時26分の間、毎時26分に出る「ひかり」と21時24分に出る「ひかり」は、東京まで「のぞみ」に追い越されない。
これらの「ひかり」「さくら」は、「のぞみ」「みずほ」と比べても所要時間は10分弱しか変わらない。乗る電車を少し変えるだけで、コーヒー代が簡単に捻出できるおトクな技だ。
オススメは臨時の「はやて」
東北新幹線のダイヤを見ると、「はやぶさ」に追い越されない「やまびこ」は存在するものの、東京―仙台の所要時間は「はやぶさ」の方が、追い越されない「やまびこ」より30分以上短いので、普段は「はやぶさ」「こまち」を利用するのがオススメ。ただ、大宮―仙台の間をノンストップで走る、臨時列車の「はやて」が運転される場合、仙台までの所要時間は「はやぶさ」「こまち」と大きく変わらないので、運転される日は「はやて」に乗るのがオススメだ。
こちらの節約法は、「のぞみ」「みずほ」と「ひかり」「さくら」「こだま」に価格差がないEX予約、「はやぶさ」「こまち」と「はやて」に価格差がないモバイルSuicaでは活用できない。
トクする乗車法 その3
大宮も活用しよう(北海道・東北・秋田・山形・上越・北陸新幹線)
その1で、東京より上野で乗り降りした方が210円安くなると紹介したが、行き先によっては、大宮を利用した方が、料金がグンと安くなる場合がある。たとえば、新青森―新函館北斗の場合は、上野より520円、東京より730円安い。郡山や長野なら、大宮で乗り降りした方が、上野より880円、東京より1090円も安い。
渋谷・新宿から利用するなら
新幹線が全速力で走ると、大きな音が出ることから、オフィスや住宅地が並ぶ東京―大宮の間では、最高スピードが時速110キロに制限されている。そのため、東京―大宮の所要時間は26分、上野―大宮も20分かかる。
一方、並行する上野東京ラインの所要時間は、東京―大宮で31分、上野―大宮で25分と、その差はわずか5分。在来線と所要時間に大きな差がなく、特急料金が安くなるなら、大宮を利用した方がトクだ。
渋谷・新宿・池袋などの、山手線の西側のターミナルを利用する場合、東京や上野に出るより、湘南新宿ラインや埼京線を活用して大宮に出た方が、安いうえに時間的に早いこともある。別表に掲載した駅を利用するときは、大宮を活用することをオススメしたい。
モバイルSuicaの「モバトク」「スーパーモバトク」は、乗車券と特急券がセットになっているため、この方法を使うと、都内―大宮まで乗車券を別途購入しなければならない。モバイルSuicaを使っている方は、上野から乗車する方がいいだろう。
<大宮を利用した場合、おトクになる駅>
●北海道新幹線
奥津軽いまべつ・木古内・新函館北斗
上野より520円おトク 東京より730円おトク
●秋田新幹線
雫石・田沢湖・角館・大曲・秋田
上野より330円おトク 東京より540円おトク
●東北新幹線
新青森
上野より520円おトク 東京より730円おトク
盛岡
上野より330円おトク 東京より540円おトク
くりこま高原
上野より530円おトク 東京より740円おトク
白石蔵王
上野より750円おトク 東京より960円おトク
郡山
上野より880円おトク 東京より1090円おトク
宇都宮
上野より420円おトク 東京より630円おトク
●上越新幹線
浦佐
上野より880円おトク 東京より1090円おトク
高崎
上野より420円おトク 東京より630円おトク
●北陸新幹線
新高岡
上野より530円おトク 東京より740円おトク
糸魚川
上野より750円おトク 東京より960円おトク
長野
上野より880円おトク 東京より1090円おトク
安中榛名
上野より420円おトク 東京より630円おトク
トクする乗車法 その4
新快速を上手に使おう(東海道・山陽新幹線)
これは、その3の大宮活用法と同じテクニック。東へ向かうなら、新神戸を利用する場合は1つ先の新大阪、新大阪を利用する場合は1つ先の京都から新幹線に乗車するというもの。
京阪神発も1駅先から乗るだけで…
新神戸―新大阪は新幹線で12分、三宮―新大阪は在来線の新快速で27分。新大阪―京都は新幹線で14分、在来線の新快速で24分。新幹線を乗り通すほうが圧倒的に速い区間だが、三宮や神戸などの神戸市の繁華街から地下鉄で新神戸へ移動する手間を考えると、時間差は圧縮できる。
また、京都から山陽方面に向かう場合も、始発の列車がある新大阪を利用する方が便利な場合もあるだろう。価格差を調べると、新神戸―名古屋と新大阪―名古屋の差が860円(のぞみ利用で970円)、京都―岡山と新大阪―岡山も、同じく860円(のぞみ・みずほ利用で970円)と、在来線の新快速を活用するだけで、大きな差が出る区間があることがわかった。
こちらの節約法は、特急券のみが割引となるEX予約のサービス「e特急券」を使えば活用可能だ。
乗り方を少し工夫すると場合によっては1000円ほどの節約ができる新幹線乗車法。コーヒーやビールなどの飲み物だけでなく、駅弁が買えるほど旅費が浮くこともある。車内で充実した時間を過ごすためにもぜひ活用していただきたい。
<三宮―新大阪を在来線に乗った方がおトクになる駅>
名古屋 860円おトク(のぞみ利用の場合970円おトク)
浜松 750円おトク
静岡 440円おトク
小田原 330円おトク
<新大阪―京都を在来線に乗った方がおトクになる駅>
米原 750円おトク
三河安城 860円おトク
掛川 750円おトク
新富士 440円おトク
三島 440円おトク
新横浜 330円おトク(のぞみも同価格)
<京都―新大阪を在来線に乗った方がおトクになる駅>
姫路 750円おトク(のぞみ・みずほ利用の場合860円おトク)
岡山 860円おトク(のぞみ・みずほ利用の場合970円おトク)
三原 750円おトク
新岩国 450円おトク
新山口 330円おトク(のぞみ利用の場合440円おトク)
博多 420円おトク(のぞみ・みずほ利用の場合530円おトク)