九州発「コスモス薬品」で突然社長降格のワケ
九州を中心に店舗を展開するドラッグストア大手のコスモス薬品。柴田太社長が、就任わずか10カ月で経営企画部長に降格することになった(編集部撮影)
「私の力不足でした。自ら辞意を申し出ました」。九州地盤のドラッグストア、コスモス薬品の柴田太社長(46)はそう打ち明ける。
5月15日、コスモス薬品は突然の社長交代を発表した。社長の柴田氏が6月1日付で経営企画部長に降格。営業本部長兼店舗運営部長の横山英昭氏(37)が社長に就任する。柴田氏は創業者で当時社長だった宇野正晃氏(71、現会長)からバトンを渡される形で、昨年8月に経営企画部長から社長に昇格したばかりだった。就任からわずか10カ月での降格となる。
「毎日安売り」の功罪
唐突にも思える社長交代をするのはなぜか。背景にあるのがこの1年間の収益悪化だ。
実はコスモス薬品の店舗売り上げ自体は順調に伸びている。柴田氏が社長に就任した2017年8月以降、直近4月までの9カ月間の既存店売上高は前年同月を上回って推移している。
同社はメガドラッグストアと呼ばれる広大な店舗を武器に、食品や日用品、化粧品などあらゆる商材を取りそろえる。中でも牽引役は食品だ。売り上げの約6割を占め、スーパー並みの品ぞろえを誇る。さらに「毎日安売り」を行うことで客の来店頻度を高めてきた。
客数増には貢献する安売りだが、その一方で粗利を悪化させる要因にもなった。そこに時給上昇による人件費増が追い打ちをかけた。これらを吸収できるだけの売り上げを確保することができず、今2018年5月期の第2四半期には10年ぶりに通期業績の下方修正に追い込まれた。
柴田氏は第2四半期の決算会見で「毎日安売りは粗利低下につながるが、短期的に粗利を犠牲にしてでも、さらなる客数増を図りたい」と第3四半期以降の巻き返しを宣言した。だが、その後も思うような結果は出せていなかった。
実際、第3四半期までの累計で売上高は4107億円(前年同期比10.8%増)と増収ながら、営業利益は157億円(同9.2%減)と減益になった。2018年5月期の通期業績も、営業利益は200億円(同10.1%減)と10期ぶりの減益を見込んでいる。
創業者との二頭体制に
次期社長には、取締役営業本部長兼店舗運営部長の横山氏が就任する。横山氏への社長交代について、柴田氏は「営業体制の強化」と説明する。
横山氏は2003年に入社して以降、現在に至るまで店舗運営に携わってきた。「新卒入社ではいちばん長く店舗運営に携わっている人物。現場からの信頼も厚い」(柴田氏)。現場経験の豊富な横山氏にバトンタッチすることで、収益回復を目指す構えだ。
さらに創業者の宇野氏も横山氏を全面的にバックアップする。宇野氏と横山氏の二頭体制を敷くことで、店舗運営を強化して客数の上積みを狙う。柴田氏は「創業者が外れると、こうまでなるかと痛感した。末永く安泰を保つためにも、宇野さんはまだまだやれる」と口にする。
会社側は来2019年5月期も低価格路線を堅持する方針だが、食品スーパーとの競争は過熱するうえ、引き続き人件費負担も重くのしかかりそうだ。採算改善も見据えてPB(プライベートブランド)の強化も図るというが、来期中に一気に拡大するのではなく、あくまでも中長期的に増やしていくという。横山・宇野両氏の二人三脚で収益回復を果たすことはできるか。