本田のパフォーマンスはさえなかった。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

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W杯出場にかけるサウジアラビアの決定力が印象に残った。日本は敗れたが、すでに出場切符獲得後の消化試合。本来ならば、モチベーションを維持することの難しい敵地でのゲームで、戦術的に引くこともなく、前半は高い位置からプレスをかけ攻守で共通意識を持ちサウジを圧倒していた。

 ロシアW杯に向け誰がメンバーに生き残るかのサバイバルがスタートしたゲームでもあり、ハリルホジッチ監督は先発メンバーを4人変えてきた。どんなゲームでも“ムラ”を見せずに戦うのが、勤勉な日本人のメンタルの特徴でもあるが、それぞれの“アピールしたい”という心理も、消化試合でのチームモチベーションにつながっていたのかもしれない。
 
 その意味で厳しい現実をつきつけられたのが、先発出場した本田と岡崎のベテラン2人だろう。

 本田のコンディションは見るに耐えないものだった。ケガの影響もあって移籍したメキシコのチームでの試合出場数も少なく、試合勘もなかったのだろうか。ミスが目立ち本田がしばしば“ノッキング”を起こすためにテンポや流れが止まる。必然、周りの連携にも影響を与えた。

 サウジの左サイドが、再三にわたって上がってきたが、本田は、サイドバックの酒井宏に任せるのではなく、自らがつられて動くシーンが目立った。そうするとスペースが生まれ、井手口と山口の2人がそこを埋めようとして動くため、徐々にピッチに“ズレ”が生じた。

 逆サイドの原口からは、プレスをかけ、そこから仕掛けていく意図を感じたが、本田がさえないため、本田―酒井宏の右サイドは機能していなかった。ハリルホジッチ監督が「45分限定」で本田を前半が終わってベンチに下げたのも無理はなかった。
 ここ数試合、日本のサッカーの質が明らかに変わりつつある。井手口、大迫らの世代が、テンポとスピードアップをチームに与えた。球球離れが速いサッカーに、“重たい本田”が入ると噛み合わないのだ。
 現状のチームに本田の居場所はない。厳しい見方だが、全盛期に近い本田のコンディションを取り戻さない限り、ロシアW杯の最終メンバーから外れてしまう可能性も高いだろう。

 岡崎のコンディションも悪かった。岡崎のところでボールが収まらない。岡崎がボールをキープできないので、サイドを使えずに攻撃パターンが増えなかった。
 2年ぶりに出場した柴崎が、ワンタッチでボールを動かして、サウジの鼻先に面白いタテパスを何本か送ったが、岡崎とのタイミングが合わなかった。パスを読めずスピードにも欠けた。現状のコンディションで比較すれば、ワントップのポジションでは、大迫が一歩も二歩もリードしているのではないだろうか。

 むしろ、柴崎―大迫の組み合わせでは、どんな連携を見ることができるのか、と考えさせられた。チームの攻撃のギアを変える能力を持っている柴崎が、今後、強化試合の中で出場機会を増やして、コンビネーションを磨いていけば、チームの新しいオプションになる。
 

 その柴崎に加えて、いい経験の場を踏んだのは、1点を追う後半22分に代表初出場を果たした杉本だ。ゴール前に抜け出してボールをもらったが、サウジのディフェンスと1対1になって思うようなプレーをさせてもらえなかった。Jリーグとは一段階上にあるアジアのレベルを実感できたと思う。高さという武器を持つ杉本にとって、この数分間の体験は大きな収穫だったに違いない。

 さてワールドカップの最終予選が終わり、ここから来年6月の本番までの数か月が重要な時間になる。私は何度も指摘しているが、選手のサバイバルテストは早めに終えて、まずチームのベースを固めることが必要だと考える。12月1日の組み合わせ抽選後に、対戦チームを分析、対戦チーム毎に応じた戦術、メンバーを考えて戦うリアクションサッカーがハリルのスタイルかもしれないが、代表で組める合宿の日数や、試合数は限られている。なおのこと連携のレベルを高め、共通認識を深めるためにも、チームのベースを早く固めておく必要がある。そうでなければ、いつまでたっても日本のサッカーのスタイルを確立することはできない。

 では現時点でレギュラーが保証されているのは誰なのか。

 キーパーの川島、センターバックの吉田、フォワードの大迫、そして、急成長を遂げているインサイドハーフの井手口くらいではないだろうか。長友、酒井宏の両サイドバックは、保証と言うよりも、交代メンバー候補の層が薄く、競争が活発化していない。他のポジションは、前述した本田、岡崎、香川のベテランの生き残りも含めて、サバイバルが続くのかもしれないが、さらに世代交代が進み若いメンバーがチームのベースになる可能性が高いと見ている。

(文責・城彰二/元日本代表FW)