ACLの浦和対済州・Uで起こった暴行事件は、韓国でも大々的に報じられた。(C)SOCCER DIGEST

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 ACLラウンド・オブ16の浦和レッズ済州ユナイテッド戦の2ndレグ。試合直後に起こった乱闘劇は、韓国でも波紋を呼んでいる。
 
 試合後、済州・Uのチョ・ソンファン監督は「敗者のマナーも必要だが、勝者のマナーも必要だ」と語って浦和が自分たちを刺激したと弁明し、槙野智章を追いかけまわして退場となったクォン・ハンジンも『スポーツ朝鮮』の取材に対して、「槙野と武藤が私たちのベンチの前に来て過激な行動をして挑発したからだ」と、浦和に非があったと主張している。
 
 それどころか、槙野を追走したことについて「日本の選手たちがこちらに来て“槙野が悪かった。申し訳ない。理解してくれ”と言ってきた。その最中にも槙野が指を3つ立てるなどパフォーマンスを続けた。だから追いかけたんだ。自分に非がなければどうして逃げたりするだろうか。槙野を除いてはこれといってトラブルもなかった。(試合は)終わっているのに審判にレッドカードをもらった。不合理だ」とまで言い放っているが、状況がどうであれピッチで蛮行を働いたことには変わりはなく、その行為は責められてしかるべきだろう。
 
 韓国メディアも「済州・浦和“恐怖の鬼ごっこ”一波万波』(『中央日報』)、「済州、浦和との乱闘劇を海外メディアが紹介…国際的な恥」(『SPORTS Q』)、「済州、見苦しい敗北」(『ソウル新聞』)と、今回の暴行劇を問題視している。

 サッカー専門誌『FOOTBALLIST』などは「暴力を加えたのは、済州をマナーでも負けたチームにしてしまう最悪の行動だった。済州の選手の気持ちは理解できるが、挑発よりも“乱入と暴力”がさらに悪い行為だ」と、済州の行動を猛烈に批判している状況だ。
 
 Kリーグを長く取材してきた立場から腑に落ちないのは、なぜ済州・Uがあのような蛮行に走ったのかということだ。
 
 というのも、そもそも済州・Uは、韓国でもフェアプレーに定評があるチームなのだ。昨シーズンに宣告されたイエローカードは41枚で、Kリーグ・クラシック(1部リーグ)の12チーム中、もっとも少なかった。
 さらにレッドカードはゼロで、『2016 Kリーグ・アワード』ではクラシック・フェアプレー賞を受賞している。受賞時には済州・Uの関係者が「ファウルを減らして警告を抑えれば受賞できると(チームに)伝えていた」と誇らしげに語っていた。フェアプレー精神は、済州・Uがチーム全体で共有していた“プライド”でもあったはずだった。
 
 それがなぜACLではできなかったのか。今回の件についてKリーグのとあるクラブ関係者にも話を聞いたが、そのクラブ関係者があきれ気味で語っていた言葉が意味深だ。
 
「もととも済州は地方の地味なクラブに過ぎなかったが、クラブ史上初のラウンド・オブ16進出でメディアの関心が集まり、親会社からの期待も高まった。一説によると、親会社のSKからかなり発破をかけられたと聞くが、それが悪いほうに作用した典型だろう。過信し舞い上がり、感情をコントロールする術さえも失った。敗北を受け入れず、何かと過剰に反応する姿は、経験不足の一言に尽きるだろう」
 
 ただ、前代未聞の蛮行を“経験不足”のひと言で許すわけにはいかないし、韓国のサッカーファンたちはもっと厳しい。韓国のサッカーファンたちが集うネット掲示板には、「いくら日本の選手が先に挑発してきたとしても韓国の選手は恥ずかしいことをしたよ」「試合は0-3だけどマナーは0-30だ」との書き込みが並んでいる。
 
 なかには「韓国の顔に泥を塗ってきた」「サッカー選手じゃなくてヤクザ集団だな」などのコメントもあった。韓国贔屓で日本に対して何かと対抗心を持つサッカーファンたちですらも、済州・Uの蛮行を問題視しているのだ。