籠池氏証人喚問、100万円受け取りがウソだと判明したら「偽証罪」に問われる?
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、証人喚問された籠池泰典氏の証言について、与党は真偽の検証を進め、虚偽だと判断した場合は偽証罪で告発することも視野に入れていると報じられている。
自民党の下村博文幹事長代行は3月26日、籠池氏の証言について、「偽証罪に問われるべき発言が多々あった」とする一方、告発は委員会の全会一致が慣例となっているため、「(追及を強める)野党の状況をみていると難しい」と述べている。
安倍昭恵さんから100万円を受け取ったことなど、証言の真偽については、今後も調査がつづくと見られるが、一般的に偽証罪に問われるかどうかについて、ポイントはどこにあるのか。刑事事件に詳しい田沢剛弁護士に聞いた。
●100万円授受が真実かどうかより「記憶に反する陳述をしたか」が重要「刑法169条は、『法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する』として偽証罪を定めており、国会での証言については、『議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)』という法律で同様の規定が設けられています(6条1項)。いずれも国家の審判作用ないしは立法作用等が保護法益となっています」
田沢弁護士はこのように指摘する。では「虚偽の陳述をした」ということについて、以下の2つの観点で、どう考えられるのか。
(1)記憶にしたがって証言しているが、証言が客観的な事実に反している場合でも「偽証罪」に問われる可能性はあるのか(犯罪の現場でAさんを目撃したのに、Bさんだと勘違いして「Bさんを目撃しました」と証言したようなケース)。
(2)事実を証言をしているが、それが記憶に反した証言であった場合はどうか(犯罪の現場で目撃した人物が誰かわからなかったのに、Bさんを陥れようとして「Bさんを目撃しました」と証言したところ、実際にBさんが犯人だったようなケース)。
「『虚偽の陳述をした』の意味については、陳述の内容たる事実が客観的真実に反することであると説く『客観説』と、証人の記憶に反することであるとする『主観説』の対立があります。
客観説によると、証人が偽証の意思で陳述したとしても、それが真実に合致している限り、国家の作用が害される恐れはないとして、偽証罪は成立しないことになるわけです。
しかし、そもそも証人とは、自ら体験した事実を記憶のままに述べることが求められているのであって、記憶に反することを述べること自体が国家の作用を害する恐れがあるいえます。
そのため、主観説が通説的立場です。
そして、この主観説による限り、記憶に反する陳述が、たまたま客観的真実に合致していたとしても、偽証罪が成立することになります。
以上より、(1)については偽証罪不成立、(2)については偽証罪成立といった結論になります。
今般、証人喚問が行われた籠池氏が偽証罪に問われるか否かは、客観的真実と食い違う陳述をしたか否かが問題なのではなく、あくまでも記憶に反する陳述をしたか否かが重要なポイントとなります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp