ハビエル・アギーレ氏 (撮影/岸本勉・PICSPORT)

写真拡大

アジアカップのメンバーの中で、小林悠はただ一人出場機会を与えられなかった。アギーレ監督に対してマイナスのイメージを持っていてもおかしくないはずだ。だが、その小林が「アギーレ監督の練習はとても面白かった」と言う。

小林だけではない。遠藤保仁アギーレ監督の練習方法を高く評価していた。ジーコ、イビチャ・オシム、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、そしてアギーレと5人の代表監督の下でプレーした遠藤が「一番素晴らしい」と評価していたのだ。

アギーレ監督の練習の特長は、「メニューの短さ」「切れない流れ」「計算され尽くしたオーガナイズ」だった。

とにかくメニューの一つひとつの時間が短い。ほとんどは1分から3分、長くてもゲーム形式で10分。メニューが短いということは内容が単純化されているので代表に初めて招集された選手にもわかりやすい。また、もし混乱してもすぐに次のメニューになるので切り替えができる。

オシム監督も次々にメニューを変えていたが、内容が大きく変わる際は5分から10分間、選手には休憩時間があった。だが、アギーレ監督はその時間を作らない。また、ゲーム形式の練習では、流れを止めずに選手の横に行って指示を出す。ザッケローニ監督が全体のプレーを止めて指導していたのとは対極的だった。

その短いトレーニングを積み重ね、監督からのアドバイスを受けながら90分間の練習を終えると、選手は監督の狙いどおりのプレーが、いつの間にかできるようになっていた。どの練習もすべてぬかりなく計算されていた。

もっとも、コンディションが整わなかったアジアカップ・UAE戦では、アギーレ監督の狙いは具現化されなかった。戦術が浸透していたとは言いがたい。それでも本田圭佑が「サッカーの戦い方は(カタール大会よりも)今回が高かった」と振り返る。

惨敗の後に監督が交代したのなら選手は気持ちを切り替えられただろう。だが、サッカー以外のことでアギーレ監督は日本を去った。そして次期監督には、選手を引きつけるのに必要な高いハードルが残っている。

【日本蹴球合同会社/森雅史】