【イスラム国】後藤氏殺害のジハーディ・ジョンはすでに死亡で「替え玉説」浮上
今回の「イスラム国」による日本人人質殺害事件で、後藤健二氏と湯川遥菜氏の殺害予告映像や、後藤氏を殺害したとする映像にも登場した覆面の男は、ジハーディー・ジョンであると言われている。本サイト既報の通り、彼はエジプト出身の英国に移住した青年で、イスラム国の外国人戦闘員として参加、昨年8月にアメリカ人ジャーナリストを殺害する映像が公開されて一気に注目を浴びた。
日本政府もジハーディ・ジョンの正体に重大な関心を寄せている。後藤氏と湯川氏の殺害を受け、警察庁は1日に警視庁と千葉県警の合同捜査本部を設置したとことを発表した。容疑は「人質による強要行為等の処罰に関する法律」で、60人態勢で捜査にあたるという。まずは両氏の各々の殺害映像・画像を分析し、関係者や親族などから事情を聴く。また周辺国に捜査員を派遣することも検討されているという。
もちろん、捜査対象にはジハーディー・ジョン(本名:アブデルマジド・アブデル・バリー)も含まれる。殺害を実行した主犯だからだ。しかし、その雲行きが早くも怪しくなってきた。一部海外メディアがジハーディ・ジョンはすでに死亡していると報じたからだ。
本物は空爆で死亡、替え玉が殺害を実行した?ドイツ紙『ビルト』は、テロ研究の専門家でキングズ・カレッジ・ロンドン教授のピーター・ノイマン氏の意見として、1月に公開された後藤氏と湯川氏の殺害予告の動画はジハーディ・ジョンではないという記事を掲載。コンピュータによる詳細な分析を行った結果、過去の映像と比べ、身長や振る舞い、話し方や瞬きが微妙に異なっているとした。またノイマン氏は、ジハーディ・ジョンはすでに米軍と有志連合の空爆で死亡しているが、イスラム国は彼の宣伝効果を利用し続けるためにその事実を公表していないと説明している。そして、ジハーディ・ジョンの“替え玉”を作り出し、1月以降公開された動画ではこの替え玉が出演しているのだという。
同紙はまた、「ジハーディ・ジョン」というのは特定の人物である必要はなく、“処刑”を象徴するイスラム国のプロパガンダの道具であると結論づけている。ジハーディ・ジョンが本当に死んだかどうか確認する術は今のところないが、替え玉を使って音声などをデジタル処理で合成することなどイスラム国にとっては朝飯前だろう。
世界中の人々は、映像に覆面の黒装束の男が映し出された時点で、恐怖におびえてしまうだろう。そうした時点ですでにプロパガンダとして成功しているのだ。ジハーディ・ジョンが誰であるか、その正体を探ることは、あまり意味がないのかもしれない。
(取材・文/中山左往)