――「大切なものが何かはわかってる」という歌詞もありますが、真綾さんにとって“大切なもの”とは何ですか?

坂本:『幸せについて私が知っている5つの方法』もそうですけど、何を幸せに思うかって人それぞれだと思うんですよね。「あなたは、こうした方が幸せだよ」とかって簡単に他人には決められない問題じゃないですか。それを自分で知っていることが、幸せの秘訣なんだと思うんですよ(笑)。どうしたら幸せになれるのか知りたいし、知ってたらいいと思う。私自身は、人に「こうした方がいいよ」と言われてやったことは大抵上手くいかないので、納得して行動することが幸せかな?(笑)

「他人に何言われてもいい」と書いていますけど、もちろん何か言われたら嫌な気持ちにはなるはずで。でも、そこじゃなくて、どんな状況であれ、自分がしたいと思うことをするべきだと思います。当たり前かもしれないけど、分からないことがいっぱいあるので、自分が何をしたいか分かっていることが、私にとって一番重要ですね。

――タイアップの無い3曲目の『君の好きな人』はある意味、素の真綾さんに一番近い曲とも言えるのではないかと思いますが、この決して叶うことのない切ない片想いは、実体験というより想像して書かれたのでしょうか。

坂本:特に実体験というわけではないですけど、曲が先に出来て、聴いた時にすごく綺麗な曲だと思って。でも、ハッピーな曲なのか、それとも切なくて悲しい曲なのか、どちらとも取れる不思議な曲で。ただ、すごく穏やかな曲だなと思ったんですよ。だから、どんな歌詞にするか色々考えたんですけど、この曲はサビのフレーズからだったかな? 出来ていって。

自分もそうなんですけど、あまり人を恨んだり妬んだりして良いことって無いので、そういう気持ちを手放した方が静かな気持ちになれると思うんです。恋愛ソングって、失恋の歌とか色々あるけど、悲しいだけじゃなく、人を好きになるのって、本当はそれだけで幸せなはずなのに、そこに色々見返りを求めた時に悲しくなっちゃんですよね。でも、そうじゃない所で、どうやったら恋って終われるのかな? と思って書いてみました。

――今回の3曲は“幸福”をテーマに繋がっているんですね。

坂本:そうですね。このシングルもそうですけど、常にどこかで根底にテーマとして持っている所はありますね。音楽は人を不幸にするものじゃないと思うし、なるべく良い気持になって欲しいと思うんですよね。“幸福感”って何かを作る時、常にキーワードに上がってくるんですけど、特に今回は2015年の最初のリリースで、20周年も迎えるし、良い気分でスタートしたいのもあったし。2つの作品と、ノンタイアップの私自身のパーソナルに一番近い曲と、3曲それぞれ様子が全然違うものを1枚にまとめるので、一つのキーワードを決めて向かっていくとすれば“幸福感”。それがジャケットやPVを作る時にも良いヒントになっていきましたね。

――すでに20周年記念プロジェクト第1弾と第2弾が発表されてますが、第3弾以降も、やりたいことは固まっていますか?

坂本:元々あまり長いスパンで人生を想像したことがなくて。孫(正義)さんは7年だか10年だか先の未来を具体的に想像しろと言ってたんですけど、やろうと思っても全然できないんですよね。せいぜい1年ぐらい先のことまでは考えてますけど、先々のことを考えないというよりは、漠然とした予感だけはあります(笑)。15周年の時は、1年を通して沢山のことにチャレンジして、集大成感を見せなきゃいけないと思って、この1日で私は終わってもいいというぐらいのエネルギーで武道館でライブしたんですよ。でも、20周年は通過点という感覚もあるし、完璧でなきゃいけないとも思わないというか、集大成みたいなものは特に無いという(笑)。

20年も一つのことを続けられるのって確実にラッキーなので、ファンの方だったり、色んな人の力を借りてやってきたことに、お返ししたいという気持ちがあって。どれだけ自分がラッキーなのかを噛みしめる1年になるんでしょうね。そこから先も分からないけど、何か良い予感のする方へ向かって行くということは考えてます。でも、25周年はやりたくないですね。5年刻みだと身が保たない。この間15周年やったばかりなのに、次は30周年でいいんじゃないかと思います(笑)。