ロンドン市内SOHO地区には、とんこつ(豚骨)を主体とするラーメンバーが集まる

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ロンドンでラーメンの勢いが止まらない。「まずい」と言われ続けた英国の首都が、欧州における一大ラーメン激戦地に変貌するなど、誰も予想できなかっただろう。今や市内SOHO地区には、とんこつ(豚骨)を主体とするラーメンバー(日本でいうラーメン屋のこと)が集まり、味を競うようになった。

今年は既存店に加え、9月には福岡・行橋にあるとんこつラーメン「金田屋」がトッテナム・コート・ロードに、10月には金田屋の正面に、福岡の大手「一風堂」が進出した。ロンドンのラーメンの事情は、どのように動いているのか? 

ラーメンというものが、ロンドンでブームの兆しを見せ始めたのは2012年。大阪・境に本店を持つ塩ラーメン「龍旗信」が「麺屋一点張」として市内ピカデリー・サーカスに進出した。そこからロンドンでラーメンは、盛り上がりをみせていく。ロンドン三越が館内レストランにラーメンバーを設け、また「昇竜」「Tonkotsu」「ボーン・ダディーズ」など、とんこつを看板にする店も増えていった。とんこつを扱う店が一気にオープンしたことで、「ロンドン=とんこつ」のイメージができ上がった。これを盛り上がりの第一期としておこう。

その後三越ラーメンバーは、ロンドン三越自体の閉店が決まり休業してしまうものの、期間を置いた後、SOHO地区に「麺屋佐助」として移転した。麺屋佐助はロンドンでは珍しかった「つけ麺」で人々の心をとらえた。英国人シェフではボーン・ダディーズに続き、北部イズリントンに「ユナイテッド・ラーメン」が開店した。そして今回の金田屋および一風堂の進出で、ロンドンはとんこつを主にしつつも、多様なラーメンを食べられる場所へと変わっていった。ラーメンブームは第二期に入ったのだ。

パリなどと異なり、ロンドンがラーメンブームと言えるゆえんは、日系レストランだけでなく英国人シェフが現地人の手によるラーメンを作り出そうとしているところだ。ボーン・ダディーズのシェフは、「Zuma」「NOBU」という世界的に有名な日本食レストランでシェフを務めた経歴の持ち主であるし、ユナイテッド・ラーメンは、アジアで麺料理を食べ歩き日本のラーメンに魅せられた英国人が開いた店だ。

彼らが作るラーメンは、味も店舗も日本からそっくりそのまま持ってくるというものではない。日本で食べられているオーセンティックなラーメンをベースにしつつも独自の解釈を加え、かつ本場日本人の舌にも耐えうるクオリティを彼らは作り出している。これは以前からあるような、日本料理かその他アジア諸国料理か区別がつかず作るものではなく、日本の味をきっちりと認識しつつ、そこに英国人なりのオリジナリティを加えたものだ。

ロンドンのラーメンブームはまだ続きそうである。伝統的なものから革新的なものまで、ロンドンにおけるラーメンの選択肢は、現地人も巻き込みながら確実に広がりつつある。
(加藤亨延)