クリエイティブな味が印象的! 波が来つつあるイギリスのチョコレート事情

写真拡大 (全3枚)

英国人はチョコレートが好きだ。英国内で消費されるチョコレートは約55万トンで、1人当たりの消費量(8.7kg)はフランス(6.6kg)より多い。日本(1.9kg)と比べても、英国人は約4.6倍食べている(日本チョコレート・ココア協会調べ)。しかし英国のチョコレートに対するイメージは、フランスやベルギーに比べてはっきりと思い描けないというのが、一般的な感想だろう。

ところが近年、英国のチョコレートは新しい時代を迎えている。才能あふれるショコラティエも活躍している。今、英国のチョコレート事情は、どう動いているだろうか? 10月17日から19日の3日間、市内オリンピアの展示会会場で開かれ、今年で2年目を迎えた「チョコレートショー・ロンドン」に行ってきた。

会場内では、各ブースでの販売やテイスティングの他に、チョコレートをテーマにしたファッションショーや、チョコレートを使った料理教室などが開かれている。そんな中、「品質にこだわったコーヒーを出すカフェが英国でも流行っているように、選び抜かれた素材を使ったクオリティの高いチョコレートを求める人が、英国内で確実に増えている」と語るのは、英国でチョコレートバーの販売やテイスティングコースを主催する会社ココアランナーズだ。

チョコレートの楽しみ方はワインと同じである。原料となるカカオの生産地、比率、磨砕・精練過程の違いにより、同じカカオから作られたものでも、作り手によりまったく異なる味わいが生まれる。味はもちろん、色、香りなど五感を使い堪能する。そのチョコレートの奥深さに惹かれる人が年々英国でも増えているのだという。

各英国人ショコラティエも人気を集めていた。中でも数多くの受賞経験を持ち今や英国チョコレート界のスターとなったショコラティエ、ポール・A・ヤングのブースには、人がひっきりなしに集まっていた。ハンドメイドされた想像力あふれるポール・A・ヤングのチョコレートは、ロンドンに満ちる革新的な空気を、そのまま商品につめ込んだかのようだ。その他にもバリー・ジョンソン、アネイッシュ・ポパット、デマルケットなど英国を代表するショコラティエが、会場を盛り上げた。なおデマルケットは、伊勢丹新宿店で行われるサロン・デュ・ショコラに昨年出展している。

英国のチョコレートは欧州他国とどこが違うのか? 例えばフランスと英国のチョコレートを比べた時、英国にはクリエイティビティを強く感じる。口に入れた途端、優美さに包み込まれるフランスに対し、英国は伝統的な味わいのなかに新しいアディアがはじけ、主張する印象を受ける。これはロンドンとパリという、各都市が持つ雰囲気が生み出す差なのだろう。日本ではまだまだ他国の陰に隠れがちな英国チョコレートだが、その波は確実に寄せつつある。チェックしておいて損はない。 
(加藤亨延)