下村博文(しもむら・はくぶん)  文部科学大臣/教育再生担当大臣/オリンピック・パラリンピック担当大臣。1954年、群馬県生まれ。早稲田大学教育学部卒。東京都都議会議員を経て、1996年衆議院議員に初当選。現在、当選6回。2012年12月の第2次安倍内閣発足時より現職。9歳の時、父の交通事故死により生活苦となり、高校・大学を奨学金で卒業。その経験から、遺児を支援する「あしなが育英会」の副会長を務めたことも。また、大学在学中に開校した学習塾「博文学院」を生徒数2000名超の進学塾に成長させた実績を持つ。著書に『9歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に』(海竜社)、『下村博文の教育立国論』(河出書房新社)などがある。

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9月3日に発足した第2次安倍改造内閣。18人の閣僚のうち、12人が交代する大幅改造のなかで、首相の意を受け続投した主要閣僚の1人が下村博文文部科学大臣だ。2012年12月の大臣就任以来、一貫して「教育立国」を掲げ、歴代の文科大臣としては異例の6法案を成立させるなど、着々と教育改革を断行している。なかでも注目されているのは、大学入試制度改革。昨年6月に報道された「センター試験廃止」のニュースは、教育界に大きな衝撃を与えた。

教育は票にならないと言われる政治の世界で、「持続的成長のためには教育の充実しかない」と語る下村大臣。9歳で突然父を亡くし、新聞配達少年から文科大臣になった下村氏は、日本の教育をどのように変えようと思っているのか。そしてその改革はいったいどこまで進んでいるのか。改革の本丸と言える大学入試制度改革から、混迷を極めるSTAP問題まで、大臣に直接聞いた。前編、後編の2回にわたってお届けする。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎)

改革を決心した2つの理由

――ご自身が教育者であった経験からか、歴代の文科大臣のなかで最も、ビジョンを持って改革に取り組んでいるように感じます。下村大臣が「教育立国」にこだわる最大の理由は何でしょうか。

下村 それは大きく2つあります。1つめの理由は、「日本の若者の強い自己否定感」です。日本青少年研究所という機関が3年ごとに、4ヵ国(日本・アメリカ・中国・韓国)の高校生を対象に実施している意識調査があるのですが、私は大臣就任時の2012年、この調査結果にひどい衝撃を受けました。なぜなら、調査項目のなかにある「自分はダメな人間だと思うことがある」という質問に対し、YESと答える日本の高校生が84%もいたのです。4ヵ国中、ダントツの高さ。ショックでした。そこで、「自分を否定する子どもをゼロにしたい。そのためには、いまの教育を変えなければならない」と、改めて思ったのです。

 2つめの理由は、もはや待ったなしの状態で進んでいる「わが国の少子高齢化」です。このまま人口減少が進めば経済規模そのものが縮小し、日本は成熟国家から衰退国家になることも考えられます。ちなみに経済成長の要素は、ごく単純化すれば、「経済成長=一人ひとりの生産性上昇×生産人口」だと言えます。しかし少子高齢化が進むいま、15〜64歳までの生産年齢人口は減少の一途です。ただしこの流れを食い止めるのはそう簡単ではありません。だからこそ重要になってくるのが、「一人ひとりの生産性」です。ここをいかに上げることができるか、それが日本の持続的成長のために不可欠。私はそれに最も有効なのが、「教育の充実」であると考えています。

 教育とは、一人ひとりの可能性を高めていくためのバックアップ機能です。自己否定感の強い若者たちに自信を持たせることもそうですし、女性や高齢者の社会参画だったり、自分の潜在能力をさらに引き出すための社会人の学び直しだったりと、一人ひとりが年齢や立場に関係なく意欲的に学び続けることでやりがいや生きがいを持ち、自己実現ができるようになります。つまり、一人ひとりの豊かさが、結果的にこの国の豊かさにつながっていくのです。だからこそ、日本の教育をもっと進化させなければなりません。そこで私は大臣就任後すぐに、48項目の教育改革工程表を作成しました。1年半経ったいま、その達成度は3分の1程度の道半ば。しかし、着実に改革を進めています。

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