宇宙服を超えるほど強固な潜水服が開発される

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私たちが暮らしている場所から距離的にはそう遠くはないが、それでも宇宙に等しいくらい過酷な環境がある。

深海だ。

その理由はいくつかあるが、空気がないこと。そしてたいへんな水圧がかかることがその主なものだろう。

スキューバダイビングに使うようなウエットスーツでは、身体を圧力から保護することはできない。しかし、硬質のシェルで身体をすっぽり覆ってしまう大気圧潜水服というものもある。この大気圧潜水服なら身体は水圧の影響を受けることがない。

そしてカナダのNuytco Reserchという会社が少し前に新しい大気圧潜水服を発表した。EXOSUITと名づけられたこの潜水服は、アルミ製のシェルでできていて、1000フィート(約300m)の水深での作業にも対応できる。

強大な水圧にさらされず作業ができる

潜水服内は大気圧に保たれるので、潜水夫は深海の水圧にさらされることがない。そのいっぽうで、大気圧潜水服は、その構造上動きが大幅に制限されるのが難点だった。しかし、このEXOSUITでは、18のパテントを取っているというユニークなロータリージョイントを使うことでスーツの主要部分の関節は巧みに曲がるようになっていて、機動性が大幅に向上しているるのが特徴だ。

50時間の酸素供給システムとともに、二酸化炭素浄化システムを持ち、搭載した4つのスラスターによって移動が可能だ。さすがに重量は226〜272kg(装備による)もあるが、300mの深海で人間による作業を可能にしてくれる。

潜水の方法には様々なものがあり、たとえば、飽和潜水という手法をとれば、ウエットスーツに近いより軽い装備で水深300mでの作業をすることも実は可能だ。しかし、そのためには何日もかけて加圧してから潜り、浮上してからも何日もかけて減圧する必要がある。さらに、深海で作業ができる時間もかなり限られる。

そういった手法に比べれば、EXOSUITのような大気圧潜水服は、より身体の負担は少なく、手軽に深海に到達することができる。今後、深海における生物発光の調査や、古代ギリシャの難破船調査に使われることが計画されているが、ほかにもさまざまな海洋研究や作業に活躍してくれそうだ。

*出典:Nuytco Reserch -EXOSUIT-、YouTube -Deep-Diving Exosuit for Studying Bioluminescence-