裏に抜け出すセンスとゴールへの嗅覚が非凡な小林。本田を脅かす存在になれるか。 (C) SOCCER DIGEST

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3トップのポジション争いは?
 
 本田圭佑は直近のキエーボ戦(10月4日)でFKを直接決めるなど絶好調。今回の代表戦でも右ウイングを間違いなく任される。ただ、川崎の小林悠は裏に抜け出すセンスとゴールへの嗅覚に加え、突破力とテクニックも備えた優秀なアタッカー。A代表初選出ながら控えにとどまらない働きが期待できそうで、今回結果を残せば本田にプレッシャーをかける存在になるかもしれない。
 
 その小林以上に最近のJリーグで輝いているのが、FC東京の武藤嘉紀だ。9月の代表戦以降のリーグ戦では、シュートやドリブルはもちろん、ポストプレーや守備も際立つ。バーゼルでややインパクトに欠ける柿谷曜一朗よりも、現時点での序列はおそらく上。ジャマイカ戦での代表初先発も十分にある。
 
 本田、小林、武藤、柿谷をウイングとすれば、CFのファーストチョイスは岡崎慎司になる。今季のマインツでは4-2-3-1システムのCFとして奮闘。ブンデスリーガの7節を終えての5ゴールは得点ランクのトップ。これだけの結果を出しているのだから、CFで使わない手はない。コルドバのハーフナー・マイクは、リーガ・エスパニョーラの6節から2戦続けてベンチ外とコンディションに不安がある。バックアッパーが妥当だ。
 
 
香川復帰で攻撃はどう変化する?
 
 ハビエル・アギーレ監督が「中盤の選手」と明言した香川真司は、4-3-3システムならインサイドハーフを任されるはずだ。ドルトムントでのトップ下より低いこのポジションでは守備のタスクがあり、攻撃に専念というわけにはいかないだろう。
 むしろ中盤で注目すべきは、香川以外の2枚の動き。もう1人のインサイドハーフとアンカーがどう振る舞うか。それが香川のパフォーマンスに大きな影響を与えるのではないだろうか。
 
 中盤について興味深いのは、9月の連戦でアンカーを務めた森重真人のコメント。「ベネズエラ戦では(インサイドハーフの)柴崎選手をトップ下に近いところに置き、僕と細貝選手が中盤の底に並ぶような形でもバランスはいいと思いました」。
 仮に香川をトップ下のような位置でプレーさせられれば、ドルトムントで見せているようなスピーディーかつテンポのいい攻撃が、アギーレジャパンでも展開されるかもしれない。
吉田の代表辞退でアンカーとCBはどうなる?
 
 10月1日のメンバー発表当初は、FC東京で不動のCBながら今回もMFとして招集された森重がアンカーの一番手と見られていた。しかし、10月4日に怪我で辞退したCBの吉田麻也に代わってMFの田口泰士が招集されたため、森重が最終ラインで起用される可能性が出てきた。
 
 CBはこのほかに、水本裕貴と塩谷司、これも負傷で離脱した昌子源に代わって追加招集された鈴木大輔の3人。実績を重視するなら、少なくともどちらかの試合──押し込まれる展開が予想されるブラジル戦か――で、ワールドカップ経験者の森重がCBに入るのではないか。
 
 そうなった場合、アンカーはアギーレ監督が「森重のライバル」と公言した細貝萌になるはずだ。追加招集の田口は名古屋で2ボランチの一角を担っているが、代表の4-3-3でアンカーをこなせるほどの守備力は残念ながらなさそうだ。持ち前のパスセンスを活かすなら、田口はインサイドハーフのほうが適任だ。
 
 
アギーレ監督が2連戦に求めるものとは?
 
 9月の連戦を1分け1敗で終えたアギーレ監督が、現時点でなにより気にかけているのが結果。指揮官自身も、「(心配は)勝利がないことに尽きる。勝てばチーム全体が落ち着いて、より良いトレーニングができるようになるからだ」と語っている。
 
 テスト色が強かった9月のメンバー(発表当初は鳥栖の坂井達弥はJ1の出場歴がわずか4試合、広島の皆川佑介はC契約だった)より、今回の23人はアジアカップを戦う「本番仕様」に近い。初招集の小林、塩谷、田口の3人も昨季から今季にかけてリーグ戦で確かな活躍を見せており、坂井や皆川よりも計算できる戦力と言えるだろう。
 
 清武弘嗣、酒井宏樹(ともにハノーファー)の代表辞退、吉田麻也の怪我、代表スタッフとコミュニケーションを取りながら招集外となった内田篤人(シャルケ)の不在というエクスキューズがあるとはいえ、来年1月のアジアカップに弾みをつける意味でも今回の連戦で白星が欲しい。
 
文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)