青春といえば奪い合いじゃない？ アニメ「アオハライド」原作者・咲坂伊緒に聞く1
エキレビでは「アオハライド」のアニメ制作陣へインタビューを敢行。
第１回目は漫画「アオハライド」（集英社「別冊マーガレット」連載中）の作者・咲坂伊緒のお話をお届けします。
人の本音や複雑な心理を描いてみたい
───このたびは「アオハライド」アニメ化おめでとうございます。まずは、「アオハライド」という作品を書こうと思ったきっかけを教えてください。
咲坂 「アオハライド」の前に描いていた「ストロボ・エッジ」という作品が、「アオハライド」より結構ピュア寄りだったんですね。それもそれで楽しかったんですけど、それとは違う感じにしたいと思ったんです。ピュアはピュアでいいんですけど、人の本音というか複雑な心理とかを描いてみたい気がして。それを描くにはどういう主人公を立てたら描けるかな、ということをなんとなく考え始めてストーリーを作っていったんじゃないかな。
───たしかに前作の「ストロボ・エッジ」の主人公はストレートに「好き」という作品でしたよね。
咲坂 そうなんです。それも絶対に嘘じゃなくてあるんですけど、それだけじゃないですよね。だから「ストロボ」のときとは違うタイプの子を描きたいって純粋に思ったんだと思います。
───それが「アオハライド」の主人公・吉岡双葉の構想ですね。
咲坂 まずその双葉ありきで、物語を描き始めた感じですね。
───双葉が好きになる男の子は、中学のときに転校してしまって、高校になって再会したらちょっと別人になっていたという男の子・馬渕洸です。
咲坂 再会した人のキャラが全く変わっていたら、「何があったの？」ってなるじゃないですか。それから気になっていくということってあるよなって思って。自分の高校時代でも、久々に会った子がキャラ変わっていて、ということがあって。その人の数年分を見たい、でも見られないということがあったりしたので、そこを描くのはおもしろいかなって思って。
───ご自身の経験だったんですね。
咲坂 そうです。キャラが変わった子というのは女の子だったんですけど、ビックリしたっていうのがあって。それを男の子にした感じです。
───双葉と洸は物語のはじまりから距離が近いですよね。でもあと少しで離れちゃって、っていうもどかしい関係ですよね。
咲坂 お互いが探りあっている感じって楽しいじゃないですか。そこを描きたかったんですよね。
───最初の頃、双葉は友達づきあいを大事にするため、ガサツな女の子を演じています。友達関係での立ち位置を考えて行動している姿を描いているのが印象的でした。
咲坂 そこはあえて描こうと思ったんです。「そういう人って多くないですか？」って思って。もしくは本人も気づいていないことなんだけど、思春期って他の人から見られる自分っていうのを意識し始めるじゃないですか。無意識に演じていたりする子もいるんじゃないか、とか、大人になってから考えてみると、あの子もそうだったんじゃないかしら、みたいなことも多かったりして。だから「みんな絶対やっているはず！」と思って、描いてみたいと思いました。
───たとえば、友達と好きな人がかぶるってよくある話ですよね。
咲坂 ざっくりしたテーマは「青春」って思っていたんで、「青春といえば奪い合いじゃない？」と考えたからですね（笑）。じゃあ好きな人をかぶらせようかなって思ったんです。
───アグレッシブな青春ですね！
咲坂 そうですね、ふふふ（笑）。
───友達のことを応援するフリをして、こっそりと近づく子もいますけどね。
咲坂 ああ、それもイイですね（笑）。話として面白いんですけど、それをやっちゃうとキャラとして嫌われちゃうんですけどね（笑）。
───エキレビでも解説したんですが、双葉と洸ってイマドキの子なのにケータイでメールしたりして、恋愛が進まないのが印象的だったんです（レビュー参照）。メールで「おやすみ」とか、他愛のないやりとりもないんですよね。
咲坂 言われてみれば確かにそうですね。特に意図はなかったのですが、洸がメール打ってる画っていうのは、あんまり自分の中のイメージにはないかもですねえ。
キュンとするエピソードはどのようにして生まれるか
───先生の思い出や周りから聞いた話がエピソードになっているんでしょうか。
咲坂 土台はやっぱり自分の記憶とかになっちゃいますよね。知らないことは描けないし。もちろん、そのままは描かないですけど、そのときの雰囲気とか空気感を思い出して描いているって感じのほうがあっているかなって思います。
───とにかく読んでいると、キュンとするエピソードが多いです（レビュー参照）。
咲坂 近しい友達の体験談も聞いたりしていることが土台になっていると思います。
───まわりのお話以外に参考にされている本や映画などはありますか？
咲坂 何かの作品がダイレクトにヒントになっているってことは多分なくて、いままで見てきた映画や小説、自分の経験や人からの話がいつの間にか蓄積されていて。お話を描こうって思った時にその中から引っ張ってくる感じなので、どれがっていうのはないと思います。
───ご自身で描いたエピソードの中で、やってほしいものや気に入っているものはありますか？
咲坂 洸がかわいいなって思ったシーンがあって、そこは気に入ってますね。土手で洸が泣いた後、双葉とぎゅっと抱きしめ合った次の日、学校で顔をあわせてバタって倒れるところですかね。学生時代、私とじゃないんですけど、こういう子がいたんですよ。目があって、照れてバタって倒れるという。その姿を見て「かわいい！」って思ったことがあったのでその思い出をシーンに入れ込みました。
───ちなみに双葉・洸以外のキャラクターについて、お気に入りのシーンってありますか？
咲坂 全部お気に入りですけどねっ（笑）。シーンの話ではないんですが、キャラクターにはダメな部分というか弱点があってほしいと思っています。実は菊池冬馬って最初は弱点が何もない感じだったんですが、元カノに振られて意地でピアスを開けたっていうエピソードがあって。それぞれどこかしら完璧じゃないキャラを描きたいんですよ。
（小林美姫）
後編に続く
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