DeNAの新外国人右腕は松井秀喜と高橋尚成が認めた男
モスコーソはプレーオフ進出の切り札となるか
プレーオフ進出への切り札になるだろうか。DeNAが新外国人のギジェルモ・モスコーソ投手(30)を獲得し、1月31日に入団会見を行った。メジャー通算13勝の右腕の“正体”は、まだベールに包まれているが、実は2011年にアスレチックスで松井秀喜氏(39)、昨年はカブスの3Aアイオワで高橋尚成投手(38)と共にプレーしており、両者からは実力を高く評価されていた。首脳陣の期待通りに力を発揮すれば、DeNAにとって大きな補強となることは間違いない。
メジャーでは典型的な「フライボールピッチャー」として知られていた。力のある直球で押し込み、フライを量産する。本人は「パワーピッチもすることもできるけど、得意とするスライダー、カーブ、チェンジアップを駆使して6、7回まで試合を作れるように投げたい」と話すが、メジャーの強打者を打ち取ってきた力のある速球は、日本では大きな武器となるはず。平均90マイル(約145キロ)程度でも、米国と同じスタイルで十分に結果を残せる。
キャリア最高の活躍を見せたのは、アスレチックスに所属していた2011年だった。タイソン・ロスの負傷でメジャーに昇格すると、先発ローテーションに定着。21試合に先発して8勝10敗の成績を残した。結果は負け越しに終わったが、防御率3・38の数字からも分かるように投球内容は安定しており、評価は高かった。
チームメートだった松井秀喜氏も、その実力を認めていた。アスレチックスでの初登板となった5月24日のエンゼルス戦では、6回3安打無失点といきなり好投。当時、アスレチックスの先発陣には故障者が続出しており、前日のジョシュ・アウトマンに続いて、マイナーから昇格したばかりのモスコーソが重要な役割を果たしていた。これには松井氏も「けっこうビックリですよね。すごいなと思います」と話し、3Aにモスコーソほどの実力者がいることに驚きを隠せなかった。
同年9月7日のロイヤルズ戦では、8回2死まで相手打線を無安打に抑える快投劇も演じている。本拠地のオークランド・コロシアムは異様な雰囲気に包まれたが、あと少しというところで快挙を逃した。これには松井氏も「あそこまでいってましたからね。ちょっと期待して見ていました」と落胆を隠せなかった。ボールに力はあるだけに、ストライクゾーンに集まれば凡打の山を築ける。この日の投球について、松井氏は「常にストライク先行だった。そこがよかった」と振り返っている。日本では、多少コントロールが甘くなっても抑えられるはずで、より自信を持って投げれば結果はついてくるはずだ。
高橋尚成とは昨年もチームメイトだった
また、昨年は7月にジャイアンツにトレードされるまで、カブス傘下3Aアイオワでプレーした。右腕は「高橋尚成選手と同じチームにいて、いろいろと聞いた。エージェントにはチャンスがあれば日本でプレーしたいと伝えていた」と話している。尚成から日本球界の情報を収集して、環境を変えることに気持ちが傾いたようだ。一方で、モスコーソの投球を間近で見続けていた尚成は、当時から「あいつは本当にいいピッチャー。なんでマイナーにいるんだろう」と首をかしげていた。今季、2人がDeNAの先発ローテーションを形成することになったのは不思議な縁だが、どちらも実力は確かだ。
「数年前に日本のレベルがメジャーのレベルに劣らないことは分かっていた。このようなきれいな街に来られたことに感謝したい」と謙虚に話す右腕は、来日してから2日連続で食べた「ヤキニク」という日本語を早くもマスターするなど、日本の環境にも積極的に適応しようとしている。ファンにも「ジーとかジーモって呼んでもらえれば」と笑顔でアピールした。
高田GMは「先発候補はいるけど、彼ほど経験、実績のある選手は何人もいない。ぜひともローテーションの中心で、当然二ケタは期待している」とエース級の活躍を期待する。尚成と2人合計で25勝以上が計算できるようなら、悲願のクライマックスシリーズ進出が見えてくる。
「チームに先発投手として期待されているのは分かっている。与えられた仕事を100%の力でやりたい。ベイスターズが今、優勝に向けてチームを作っているところに惹かれた。そこに貢献できるんじゃないかと思って決断した。チャンスをもらえたことに感謝したい。チームメートと優勝に向かってやっていくことを楽しみにしている」
その言葉には意欲が溢れている。松井と尚成が認めた男が、DeNAを変えるかもしれない。