By Dru!

神経科学者のジェームズ・ファロン氏は、精神病質(サイコパス)の脳の構造上のパターンを探していたところ、なんと自分が精神病質の脳の持ち主であることが判明。その後、自らを研究材料に、精神病質と犯罪性との関連性を研究した結果を発表しています。

The Neuroscientist Who Discovered He Was a Psychopath | Surprising Science
http://blogs.smithsonianmag.com/science/2013/11/the-neuroscientist-who-discovered-he-was-a-psychopath/

神経科学者のファロン氏は、カリフォルニア大学アーバイン校の研究計画の一部として、実在の人物の、「正常な脳」「連続殺人魔で統合失調症患者の脳」や、「鬱病患者」「その他の精神障害」などの、何千枚にも及ぶ脳のPET(ポジトロン断層法)スキャンに取り組んでいました。

同時進行でアルツハイマー病の研究も行っていたファロン氏は、家族・親類の脳スキャンから、共感、モラルおよび自制に関係のある前頭葉および側頭葉のあるエリアで低い活性を示すという、精神病質の構造的特徴を持つ1枚の脳スキャンを発見。脳スキャンは基本的に誰のものであるかは明かされないのですが、ファロン氏が脳スキャンに記されたコードから脳の持ち主を調べあげたところ、自分の脳だったことが判明。彼は機器の異常を検査しましたが、PETスキャン機器に異常は無かったとのこと。


「精神病質(サイコパス)」とは、「精神病質(その人格のために本人や社会が悩む、正常とされる人格から逸脱したもの)である人」と辞書に記されており、共感性の低さ・自制心の欠如・大胆さなどに関連する先天性のパーソナリティ障害と言われています。

通常、科学者自身が精神病質であると気づいた場合、大半の人が非難を恐れ秘密にしてしまうところですが、ファロン氏は自分が精神病質者であることを含め、TEDで「殺人者の精神の探求」というスピーチを行ったり、NPRインタビューおよび「サイコパスの内部」という本を出版して、研究結果の全てを発表しています。


「私はいまだかつて誰かを殺したり、レイプしたことはありません」と話す、幸福に結婚して家庭を持つファロン氏は、「前頭葉・側頭葉の脳エリアが精神病質を特定し、殺人行動に影響する」という仮説が間違っていると考え、自らの脳を一連の遺伝子検査にかけました。しかし、残念ながら彼が得たのは、「攻撃性」「暴力性」「低い共感性」などのハイリスクの対立遺伝子をすべて持っているという結果。

さらにファロン氏の母親が明らかにしたことには、1892年に父親・継母の殺害で告訴されたリジー・ボーデンは、ファロン氏の家系の人間だとのこと。

By angus mcdiarmid

これらの結果と神経学的・行動の研究に基づいて、ファロン氏は精神病質者として分類されますが、全ての精神病質の脳を持つ人が犯罪に走るわけではありません。ファロン氏は、精神病質脳を持つ自分が非暴力的で、安定し、科学者として成功していることや、精神障害の診断・統計マニュアルの形式的な診断プログラムでは現われないことから、現在の精神病質の定義が広すぎることを指摘しています。

数回にわたる流産の末に産まれたファロン氏は、両親から深く愛されたと同時に、厳しいしつけの中で育てられました。そこで彼は、「遺伝要因」以外にも、「環境要因」が大きな役割を果たし、特に幼年期の行動の結果が重要である、と述べています。

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さらに、3番目の要因として「自由意志」についても触れており、ファロン氏は、「自分が精神病質と判明してから、意識的に他人の感情を読み取るなど、行動や振る舞いを変えるために努力しています」と話しており、また、「精神病質は全て同じではないことは、自分自身を示すことで証明できると考えます。私は誰かを殴りたいとは思いません。積極的な性格は時として攻撃性に転化しますが、この攻撃性は、議論で勝ちたいと思う私の意志です」と述べています。