朝日記者「5A契約で電気料金月241円!」 こんな節電生活掲載する意味があるのか
電気使用を極限まで節約した「5アンペア生活」を実践中だという朝日新聞の記者がいる。この酷暑の中でも電気料金が月額241円という、脅威の節電に成功したという。
この5アンペア生活について東京電力に問い合わせてみると、電話口の向こうからはこんな反応が返ってきた。
「ご、5アンペアですか? あるかどうかも含め、調べてみないとわからないのですが……」
5アンペアではエアコンや電子レンジは当然使えない
東電担当者さえ驚く5アンペア生活を実践するのは、朝日新聞の斎藤健一郎記者だ。斎藤記者は2011年3月11日、福島県の郡山支局で東日本大震災に遭遇、これをきっかけに生活を見直し、東京異動後の2012年7月から契約アンペアを5アンペアに切り替えたという。
とはいえ、5アンペア(=500W相当)以内で暮らすのは尋常ではない。主な電化製品の消費電力はオーブンレンジが14アンペア、掃除機13アンペア、ドライヤー12アンペア、エアコンは10アンペア……といったあたり。「ドライヤーとレンジとエアコンを同時に使っていたらブレーカーが落ちた」とはよく聞くが、5アンペア契約の場合、これらの製品は単体でさえ使うことができない。
実践1周年を期に書かれた2013年9月7日付朝刊の記事などを見ると、その暮らしぶりは凄まじい。たとえば、「冷蔵庫は使わず食料は使い切る分だけ買う」「暑さは扇風機で、寒さは湯たんぽや着る毛布で震えつつしのぐ」「照明は小型の電球やアウトドア用の電灯で手元を照らすのみ」。どうしても必要だというパソコンや携帯電話を除いては、まさにほとんど「電力に頼らない」生活を実現している。
引っ越しに車購入…「節約」にはならないかも
もっとも、いくつかの留保点はある。ツイッターなどで読者からも指摘が上がっているが、職場である新聞社では普通に電力が使えるので、遅くまで仕事をしていればその分使用料は少なくて済む。食材などもコンビニやスーパーなどの冷蔵庫を利用しているとも言える。こうした「他人の電気を結局使っている」点は斎藤記者自身も認めている。
また7日の記事中では、冬の寒さに耐えかねて日当たりの良い部屋に引っ越しをしたこと、太陽光発電や蓄電池が利用できる中古のキャンピングカーを購入したことも記される。斎藤記者は自身のツイッターで、以下のように補足している。
「今回の5アンペア生活記事は、引っ越したり、動く家を買ったりと、快適化のためにかなり大がかりなことをしたことを報告しています。いろいろ節電アイテムも購入しています。清貧の生活をイメージしている人にとってはツッコミどころ満載でしょう」
「ただ、5アンペア生活は、お金を使わずに暮らすことではありません。エネルギーをなるべく使わず、かつ、快適に暮らそうと追求していくと、それなりの出費はかかってしまうのです」
プラン紹介でも隠れている「裏メニュー」?
ところでたとえば東電の「お選びいただける電気料金メニュー」では、一般家庭用の契約プランは最低10アンペアから(従量電灯B)しか紹介されていない。5アンペア契約(従量電灯A)はより詳細な別の一覧にしかなく、本来は生活用というより「アパートなどの共用部分、たとえば電灯やテレビ用のブースターなどに使うことを想定したものです」(広報担当者)。ちなみに契約は基本的に年単位で、斎藤記者の暮らしぶりを「真似」するのは普通の人には不可能だ。
ちなみに朝日新聞と節電といえば、7月に稲垣えみ子論説委員が「電気さん、ありがとう」と題したコラムの中で、暖房は火鉢を使う、夜も電気は極力つけず暗闇で過ごすなどの努力の結果、電気料金を月額700円近くまで抑えたと豪語して話題になったことがある。朝日新聞には変わった記者が多いのは認めるとして、こんな暮らしをする人はめったにいないし、5アンペア生活は参考にもならない。掲載する意味がどれほどあるのか疑問だ。