セルジオ越後の一蹴両断! 第299回「いよいよCLベスト8! 波乱を起こすならPSGとユベントスだ!」
欧州チャンピオンズリーグ(以下、CL)のベスト8が出そろった。最大の驚きは17季ぶりにイングランド勢が全滅したこと。原因はいろいろあるけど、決勝トーナメント1回戦でレアル・マドリーに惜敗したマンチェスター・Uを筆頭に、今大会では各チームともツキに恵まれなかった。決して、プレミアリーグのレベルが落ちたわけではないし、必ず来季は巻き返すだろう。
ベスト8の顔ぶれを見ると、バルセロナ(スペイン)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、ユベントス(イタリア)、パリ・サンジェルマン(フランス。以下、PSG)、ガラタサライ(トルコ)と、今季の各国リーグで首位を走る名門が順調に勝ち残っていて、これぞCLという感じがするね。
なかでも、PSGやガラタサライなど、積極的な“投資”をしているチームが残っているのが面白い。
PSGは今季開幕前に超大型補強を敢行。セリエA屈指のドリブラー、ラベッシを皮切りに、イブラヒモビッチ、チアゴ・シウバと超大物を次々に引き抜いた。さらに今冬には37歳のベッカムをサプライズ獲得。近年のフランス勢では最も魅力的なキャスティングのチームになった。
一方のガラタサライも、冬の移籍市場でドログバとスナイデルという大物を獲得。こちらも勢いを感じさせる。
選手獲得に大金を投じても、CLで勝ち進めば、巨額の放映権料が入って黒字になる。バルサやレアルなど優勝争いの常連に対抗するには、やっぱり、それくらい思い切ったことをやらないとダメだということだろう。
とはいえ、優勝候補はバルサ、レアルのスペイン“2強”で揺るがない。今後の組み合わせ次第だけど、決勝でクラシコが実現してもおかしくない。
特に、バルサは相変わらずの強さ。決勝トーナメント1回戦の第2戦(4−0)では、あのACミランを子供扱いしていたからね。まるでフットサルみたいにダイレクトパスをつなぎまくって、相手にファウルをする機会すら与えない。まさに“鬼回し”だよ。僕も試合を見ていて笑うしかなかった。
ただ、バルサとレアルの決勝じゃ順当すぎるし、リーガ・エスパニョーラでも両チームの対戦は見られるので、ここはぜひ、ほかのチームに頑張ってほしいところ。
そういう意味で期待しているのは、PSGとユベントス。波乱を起こすなら、この2チームだね。
ベスト8でバルサと対戦するPSGは、個の能力を生かした攻撃サッカーが持ち味。バルサに中盤を支配されても、ひとりでゴールを決める力があるイブラヒモビッチがいるだけに、チャンスはゼロじゃない。
一方、ユベントスは攻守の切り替えの速さが素晴らしい。司令塔ピルロを中心に、実に完成度の高いサッカーをしている。今大会で優勝すれば、スキャンダルのペナルティによるセリエB(2部)降格(2006年)という苦難を乗り越えての名門完全復活だ。そんなドラマを見てみたい気もするけどね。
最後にひとつ残念なのは、日本人選手が所属するチームがひとつも残っていないこと。香川のマンUも、内田のシャルケも決勝トーナメント1回戦で惜しくも敗退。それでいて、香川の抜けたドルトムントが残っているのは皮肉としか言いようがない。ぜひ来季はこのステージで躍動する日本人選手の姿を見たいね。
(構成/渡辺達也)