香港・台湾の活動家による終戦の日2012年8月15日(水)に尖閣諸島上陸強行突破、その後の強制送還は日本国民の「中国嫌い」ムードを助長している。私の友人たちも中国古典や古来の中国文化には親しみを覚えるが現在の中国には親しみを感じないという者が多い。

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日本経営管理教育協会が見る中国 第216回−水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長) 

尖閣列島問題で「中国嫌い」が急増

 香港・台湾の活動家による終戦の日2012年8月15日(水)に尖閣諸島上陸強行突破、その後の強制送還は日本国民の「中国嫌い」ムードを助長している。私の友人たちも中国古典や古来の中国文化には親しみを覚えるが現在の中国には親しみを感じないという者が多い。

 内閣府が継続的に実施している「外交に関する世論調査」でも「親しみを感じない」という割合が7割を超えており「親しみを感じる」は2割程度である。思うに日中間には双方の国情の理解不足による「誤解」が継続していたように思うのである。

日本の中国認識 「誤解」の連続

 古来、中国は孔子・孟子の教えを学んだ古典文化の源泉であったが、人的往来の少なかった時代には、それは主に文献・書籍上の尊敬だけによるものであった。その後明治維新の開国後往来が盛んになると、それまでの文化的尊敬の念が中国は近代国家にはなりえないという民俗蔑視へと変化した。日清戦争による勝利はそれに拍車を掛け、日中戦争では中国民族意識の高まりを見誤り敗戦に至ったのである。

 社会主義国中国に対しても「誤解」の連続であった。当初は社会党の党首が訪中して「蝿一匹さえいない」と社会主義中国を褒め称え、また文化大革命のときにも「これは人類史上初の大いなる実験である」と褒め称える学者もいた。一方では評論家グループが訪中して、「あれはジャリ革命だ」と紅衛兵を批判したりした。

 そして改革開放後の中国の急成長と日本経済を超える経済成長躍進振りに対する対応では、環境が大きく変化しているにもかかわらず、米中大国に挟まれた今後の日本の進路をどうとるべきかについてはまだ方針が定まっていない状況である。

日中関係がさらに悪化

 日中関係がさらに悪化したのは2005年夏の反日デモによるもので、この時点で中国に対して「親しみを感じない」層は6割に達した。2008年は北京五輪の年であり、日中関係の改善が期待されたが、3月に発生したチベット騒動に対する弾圧体制に多くの日本人が反発して改善には至らなかった。一方ではその間小泉元首相が靖国神社参拝を繰り返したことが、中国を刺激し、この風潮を見た日本世論は「中国嫌い」が一段と高まることになった。

 その間中国では江沢民政権が執拗に反日教育を続けており、日本敵視キャンペーンが続けられていた。中国嫌いの日本指導者と日本嫌いの中国指導者が日中関係悪化を煽ったということも出来る。

冷静な相互理解が求められている

 私共中小企業診断士グループは1995年から北京市の「シンクタンク」組織と一貫して交流を続けてきた。反日デモが荒れ狂う最中にも交流は粛々と続き、その間にも相互理解は深まっていった。

 そして2012年今年の6月には「健康都市建設」をテーマに北京で国際シンポジウムを開催するまでに至ったのである。聞くところによると日中間で行われた高校生の民宿交流で来日した中国の高校生が帰国時の感想として異口同音に「日本人がこんなに優しい民族だとは知らなかった」と中国での教育と実情の違いを改めて認識して帰国したと伝えられている。

 これからは一般の民間人相互の交流が幅広く行われることが一番大事だと思う。幅広い国民同士が交流することで想いを超えた理解が深まれば両国の平和は保持できるに違いない。

 第二次大戦当時には「鬼畜米英」と教育されて信じ込んでいたものが、終戦後には「子鹿物語」や「風と共に去りぬ」などの天然色の映画を見て、文化的な大ショックを受けたことを思い出している。これからの日中間の理解では局部的現象をすべてと思い込んで判断しないこと。自分の好みや希望的観測で判断しないこと。何よりもマスコミに煽られて感情的にならず冷静な判断をすることが強く求められていると思う次第である。

 写真は北京で開かれた国際シンポジウム。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:水野陽子)