秋田監督に経験を積ませるためと思えば多少は理解できるが、J2に降格すると秋田監督も解任してしまった。毎回、J1に上がってきてはJ2に落ちる。京セラや任天堂という超優良企業がバックにつき、京都という伝統ある町がホームなのにもかかわらず、まったくチームとして結果が出せない。それもこれも、フロントのビジョンのなさが原因ではないだろうか。

■問われるフロント力
そして、何と言っても今季のJリーグを振り返った時、我々サッカー関係者の間で挨拶のように使われたのが、「まさか、FC東京が落ちるとはね」。今季はこの言葉に尽きる。なぜ、豊富な戦力を持つFC東京は降格したのか。その原因を考えると、まさにビジョンという言葉がぴったりだ。

なぜ、怪我人がここまで多発したのか? なぜ、あのタイミングで再び大熊監督を選んだのか? さらに言えば、なぜ最終戦で大黒を先発で使わなかったのか?

降格後、選手たちは「まさか自分たちが落ちると思わなかった」と危機感を覚えていなかったことを明かしている。さらに、先日退任した村林社長は来季J2での戦いについて、「主力を放出することになるかも」と語ったり、「補強をする」と語ったりと二転三転の発言を繰り返していた。おそらく予想していなかった出来事だけに、予算を考えると頭が真っ白になってしまったのだろう。そんな状態のFC東京を見ていると、欠けていたのは決定力でも守備力でもなく、先を見る力、つまりビジョンを誰もが持てていなかったのは明白だ。

Jリーグの未来は、暗くないと信じている。近年は攻撃的なサッカーが増え、特に今季でそれに拍車がかかりそうな予感もする。Jリーグをもっと魅力あるものにするために、FIFAクラブW杯など一般の方も視聴するコンテンツで、Jリーグのチームがファンを魅了するフットボールで躍動してほしい。

そのために、まずはクラブがしっかりとしたビジョンを持たなければいけない。そして、「そのビジョンは3年、5年で変わるものであってはいけない」(孫正義)し、「フットボール本来の在り方」(ヨハン・クライフ)も忘れてはいけない。

いま、Jリーグのフロント力が問われている。(了)