佐々木朗希(23)で70億円損失、米球界に“密約説”再燃 「5年計画」との奇妙な一致と「サイドレター」への疑念
手際よすぎる球団発表
プロ野球ロッテが11月9日午後、佐々木朗希投手(23)に対し、ポスティングシステムによるメジャー移籍を容認すると発表した。佐々木のメジャー移籍は昨オフに突如、表面化。大リーグで25歳未満のドラフト対象外の海外選手はマイナー契約しか結べず、巨額な譲渡金を失うため、「ロッテにメリットが皆無だ」などと物議を醸していた中で、表面上はわずか1年で球団が折れる形で決着した。合理性を欠いた結末に、米球界では改めて「密約説」が持ち上がっている。
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ロッテ球団は午後3時、報道各社に対し「佐々木朗希投手について、ポスティングによる米国メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)球団への移籍に向けた手続きを開始することにいたしましたので、お知らせします」と発表した。同時にX(旧ツイッター)でもファン向けに同様の内容を発表。佐々木のほか、吉井理人監督、編成トップの松本尚樹球団本部長のコメントを相次いで掲載し、早くに方向性が決まっていたことを窺わせる手際の良さだった。
タイミングに関しても狙い澄ましたかのようだった。球界最大のイベントである日本シリーズの日程に配慮しつつ、同シリーズ後の正力賞やプレミア12の開催期間中など球界の主要行事の日程の合間を縫った。
「15時発表というのは一般紙の夕刊や夕刊紙には載らない時間帯で、スポーツ紙との公平性を保てるため長く球界ではセオリーとされてきた時間です。また、今月17日に有料のファン感謝デーがあり、同10日まで入場券が販売されていました。ファン感では佐々木も挨拶しないわけにはいかないでしょう。結果的に来ないにしても、事前に来るんじゃないかと思わせるだけでも効果的で、抜かりはないように感じました」(遊軍記者)
しかし、肝心のポスティング移籍を容認したこと自体は抜かりがないとは、とても言えない。球界の常識から大きく外れたもので、時期尚早の言葉以外には見当たらない。佐々木が25歳になっている2026年オフのポスティング移籍なら、どうだったのだろうか。
佐々木が早期渡米を望んだワケ
米大手マネジメント会社の代理人は、山本由伸投手(ドジャース)が昨オフにオリックスから移籍した際、手にした投手史上最高額の12年総額3億2500万ドル(約465億円=当時のレート)に匹敵する契約を結べる可能性があったとみる。山本の移籍に伴うドジャースからオリックスへの譲渡金は約72億円。佐々木でロッテが米球団から受け取るとみられる約188万ドル(約2億9000万円)とは雲泥の差だ。
佐々木自身も今オフはマイナー契約に限られ、米スポーツ専門局ESPNによると、契約金は最大でも750万ドル(約11億4000万円)にしかならないという。エンゼルス時代の大谷翔平(ドジャース)と同様に1年目の開幕前にメジャー昇格しても、年俸は最低保障額(今季は74万ドル/約1億1000万円)となる見通しだ。
「大谷は昨オフにFAになり、7億ドル(約1014億円/当時のレート)を手にしたわけですから、その成功に倣って佐々木サイドは年俸調停を得る3年目のオフの大幅昇給、そしてFAとなる6年目のオフの大型契約を目指せばいいという考えかもしれません。25歳を待っての大型契約より、早くメジャーに行った方がスポンサー収入を含め、さまざまな意味で付加価値が高まるというのは1年でも早い渡米を望んだ理由だとみています」(同代理人)
球団は“約束”否定も
ロッテは佐々木の育成に関し、プロ入り時から「5年計画」を掲げてきた。偶然なのか、ちょうど5年目を終え、ポスティング容認に至った。スポーツメディアによると、松本球団本部長は「5年というのは全く決めていなかった」と語り、入団時に佐々木サイドと早期渡米の約束があったのかどうかについては「実際、本当にないです」と否定した。
その上で「本人の強い思いを5年間聞いていた。想いの強さなどを最終的に判断して容認しました」と“夢の後押し”を主な理由に挙げた。だが、これでは今後もロッテでは、選手が強く希望さえすれば、戦力的にも金銭的にも大きな損失が出ることを承知の上でポスティング移籍を認めるということになる。
「そういう方針の球団はNPBには存在しないでしょう。だからこそ入団時の、いわゆる“サイドレター”で球団と佐々木サイドの間で何らかの取り決めがあったとしか思えないのです。ポスティングを気前よく認める球団としてアマチュア選手にアピールしたいとでも言うのでしょうか? 松本さんの言葉は誰もが納得できるものではありません」
佐々木にも球団にも“悪印象”
前出の代理人がさらに続ける。
「これでは佐々木は、過去にポスティングでメジャー移籍した他球団の選手に比べ、チームへの貢献が不十分なままに自身の要求をごり押ししたと言われても仕方がない。また、絶対的エースになり得る投手をみすみす手放した球団は、チーム強化に最善を尽くしていないと言われても反論のしようがないと思います。両者ともにこの結論でファンから理解を得ることは難しいでしょう。ただ、そうであっても事前に取り決めがあったとは、におわすこともできないでしょうが……」
いずれ佐々木がメジャーで活躍すれば、渡米時の経緯などは風化していくに違いない。釈然としない後味の悪さを残し、今後の焦点はドジャースが確実視される移籍先へと移ることになる。
デイリー新潮編集部