丸亀製麺(筆者撮影)

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 帝国データバンクの今年10月発表の調査によると、飲食店の倒産が過去最多ペースで発生しているとのことだ。業態別では、居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」の倒産が最も多い。深刻なのは倒産だけでなく個人店の廃業も増えていることである。
 個人経営の小規模事業者が多い飲食業界は、食材、人手不足と人件費上昇、光熱費の高騰などで、ただでさえ低収益なのに、今後さらに厳しい経営を余儀なくされそうだ。

 コロナ収束後、期待したほど客足が回復せず、加えて客離れを懸念し、価格転嫁を躊躇し売上が伸びないのに経費ばかり負担が大きくなっているのが実情だ。そんななかこれまで好調を維持してきた丸亀製麵を運営する株式会社トリドールホールディングスにも気になる兆候が出てきた。同社の取り組みと今後の課題について説明する。

◆丸亀製麵が売上の半分を占める

 うどん業界で最多店舗数を誇る丸亀製麺を運営するのは株式会社トリドールホールディングス。2000年11月、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」1号店を出店。現在の店舗数は840店舗(2024年3月期)である。2016年10月持株会社体制移行に伴い、株式会社トリドールホールディングスに商号変更して現在に至る。

 収益状況は、国内その他と海外事業を含めて、売上2320億円、営業利益116億円、営業利益率5.0%である。中核ブランドの丸亀製麺は、売上の約50%を占めるなど順調に推移しており、売上実績は1021億円(2023年3月期)→1149億円(2024年3月期)。前年比12.4%増と伸ばしており、過去最高も更新している。

◆業界2位の「はなまるうどん」との差

 営業利益も116億円(2023年3月期)→183億円(2024年3月期)と、59%増と伸ばしている。営業利益の16.0%は驚異の収益力であり、客数を減らさずにこれだけ儲ける力があるのは見事だ。

 うどんチェーン業界は店舗数・売上と共に、1位と2位には開きがあり、2位の「はなまるうどん」は店舗数418店舗、チェーン売上334億円、営業収入292億円(2024年2月期)だ。丸亀製麺のほうが出店数は2倍以上、売上は3倍以上の差があり、圧倒的な優位性を確保している。

 同じトリドール傘下のラーメン「ずんどう屋」も大阪など関西の既存店が特に好調に推移しており、店舗数は87店舗(2024年3月期)と増えている。トリドールは、現在、21のブランドを展開しており、適切なポートフォリオ・マネジメントができるようモニタリング体制を強化中だ。

丸亀製麺を中核としたトリドールの課題

 丸亀製麵を中核として勢いを増すトリドールだが、一方で課題も多い。筆者が主な課題だと思う点を3つに分けて紹介したい。

 1つ目の課題は、今回の決算だ。トリドールの2024年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比43%減の15億円だった。英国で展開している「フルハムショア」の一部店舗で減損損失5億7800万円、また、海外で繰り延べ税金資産の取り崩しなどで税金費用が増加したようだ。

 また、前出のずんどう屋、カフェの「コナズ珈琲」など「国内その他」は既存店が売上は好調で約2割の増収だったが、運営管理面で人員の投入を増やしたことで、人件費率が上昇、原材料価格も高止まりしている。同部門の事業利益は5%減となっていた。

 しかし、こういった特損や営業費用の増加がありつつも、売上は25%増の658億円、事業利益は13%増の44億円といずれもこの期間として過去最高だった。売上の半分を占める丸亀製麺の事業利益は22%増と他業態を牽引している。25年3月期の連結業績予想は据え置くなど、経営課題が多いのも事実だが、今後に期待したい。

◆ライバル「資さんうどん」の動向