リドリー・スコット監督が「訛りなんてどうでもよくなる」と語る『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のデンゼル・ワシントン
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 アカデミー賞5冠に輝く大ヒット映画の続編『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(11月15日公開)を手掛けたリドリー・スコット監督が、久々のタッグとなった名優デンゼル・ワシントンについて語った。

 本作は、古代ローマを舞台に、皇帝の謀略によって妻子を殺され、奴隷の身分となった元大将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)が、剣闘士となって戦う姿を描いた『グラディエーター』(2000)の続編。1作目のその後が舞台となり、ローマ帝国軍の侵攻によって妻を殺された戦士ルシアス(ポール・メスカル)が、復讐を胸に剣闘士としてコロセウム(円形闘技場)の戦いに挑む。

 デンゼルが演じるのは、ルシアスの復讐心に目を付け、自分の剣闘士としてローマへと導く謎の商人・マクリヌス。マキシマス亡き後のローマを治める狂気の双子皇帝、ゲタ(ジョセフ・クイン)とカラカラ(フレッド・へッキンジャー)の近くで、虎視眈々と権力の座を狙う男で、スコット監督は「マクリヌスは、ローマ帝国が機能不全に陥っていることを嗅ぎつけ、兄弟の玉座が実に脆いことを察知する。そこで『この二人を破滅に追いやることができる。そして私が玉座をいただく』と考えるんだ」とその複雑なキャラクターについて語る。

  「(1作目の)『グラディエーター』では、オリヴァー・リードが(マクリヌスのように)悪役ともとれるような役を演じていた。オリヴァーは良い役者ながらも、かなりクレイジーなやつだったけど、デンゼルはクレイジーじゃないね」

 スコット監督とデンゼルは、ニューヨークの暗黒街が舞台の実録映画『アメリカン・ギャングスター』(2007)でタッグを組んだ仲であり「『アメリカン・ギャングスター』は私の作品の中でも良い部類に入ると思う。1960年代から1970年代のハーレムを研究するのは面白かったし、デンゼルとの仕事もうまくいったからね。彼のことはよく知っているんだ」と振り返る。

 それだけに、デンゼルに寄せる信頼は絶大。本作の予告編が公開された際には、デンゼルのニューヨーク訛りのセリフ回しが一部で話題になったが、スコット監督は「なるべく訛りを抑えるようにと言うこともできただろうが、この映画の舞台はなんと言ってもローマ帝国が舞台だ。(だからといって)イタリア訛りで話してもらうのも見当違いだ。結局、デンゼルはあまりにも(演技が)うまいので、彼の訛りなんてどうでもよくなる。だからそのままやらせたんだ」と語る。

 もちろん、主人公ルシアスを演じたポール・メスカルのことも絶賛。「ポールの演技を初めて見たのは、『グラディエーターII』に取り掛かる前のことだった。偶然、(ポールが出演するドラマシリーズ)『ふつうの人々』を観たんだ。不思議なことに、彼が(アイルランドの名優)リチャード・ハリスを彷彿とさせる役者だと気づいた。アイルランド語には『巧みな演技』を意味する表現があると聞いたことがあるが、どうしてアイルランド人はあんなにも演技がうまいんだろうね?」というスコット監督は「その後、『グラディエーターII』の脚本を進めていくうちに、ルシアスの顔としてポールが浮かび始めたんだ。『ルシアス役をやってみるかい?』と本人に声をかけたら、『もちろんだ!』と二つ返事だったよ」と経緯を明かす。

 そんなポールの魅力について、彼の舞台経験をあげたスコット監督は「私自身はあまり舞台を鑑賞しないのだが、役者を起用する時は、舞台役者としての技量を持つ人を起用しがちだ。ポールもそんなうまい舞台役者の一人。だから、大きい芝居もちゃんとできる」と語ると「ポールは今も舞台で土台を築いている。『グラディエーターII』の撮影後にも舞台に戻っていったくらいの生粋の舞台役者だし、役者生命も長いことだろう」とこれからの活躍にも太鼓判を押していた。(編集部・入倉功一)