豪雨被害で死を覚悟「私の代で潰すわけには…」 老舗『一富士旅館』が移転して営業再開 熊本・人吉市
2020年7月の豪雨で被災した熊本県人吉市の宿泊施設で唯一、本格的な営業を再開できていなかった旅館が、きょう(11月8日)グランドオープンしました。再開直前の様子に密着しました。
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支えてくれた人吉への恩返し
大正時代から続く人吉市の一富士旅館。新たに誕生したのは、人吉市内で他にない戸建て1棟貸し切りの客室です。
宿泊客にリラックスして過ごしてほしいという思いを込めて建てました。
一富士旅館 4代目女将 松田淳子さん「川のせせらぎが聞こえて、鳥のさえずりが聞こえて、ゆっくり泊まってもらえるというのがお客様に喜んでもらえる条件かなと」
4年前、人吉市の中心市街地で営業していた一富士旅館は、すぐ近くを流れる球磨川が氾濫して5メートル近く浸水しました。
松田さん「(屋上から)下を見たら道路が川みたいになって、いろいろなものが流れてきた。娘にだけは電話した。『もしかしたらこれが最後の電話になるかもよ』と言いながら」
死を覚悟するほどの被害。タオルなど身近なものさえ失い、旅館も営業できなくなりました。
それでも…
松田さん「代々続いてきた宿なので『私の代で潰すのは…』との気持ちもあり、もう一回やり直さないといけないとの気持ちだった」
壊れた建物は使用不能になり、土地も区画整理の対象に。そのため新たな土地探しから始め、以前の場所から約4キロ離れた温泉が湧き出る山あいの場所で再出発を決めました。
新たに建てた8棟は、テラス付きのスイートルームや和室がメインの広々とした部屋など4種類。全ての部屋に付けた露天風呂は9月のプレオープンでも好評で、各棟に配膳棚を付けることにもこだわりました。
松田さん「特に女性のお客様に部屋でゆっくりしてもらいたい。寝間着のままで化粧もせずにゆっくりと朝食を部屋で召し上がってもらい、あと1回お風呂に入ってゆっくりしていただけるかなと」
廃業した場所を除くと、これで人吉市の宿泊施設がすべて復旧。松田さんは、支え続けてくれた地元・人吉への恩返しを誓います。
松田さん「まだまだ足りないところがいっぱいあるので、お客様の声を聞きながら少しずつ改善していきながら『一富士に泊まりに行きたい。人吉に行きたい』というお客様が増えていけばいいなと」