京大と住友林業が開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」の打ち上げが成功
by 京都大学
2024年11月5日、京都大学と住友林業が共同開発した世界初の木造人工衛星「LignoSat」が、SpaceXのロケットによって打ち上げられたことが報告されました。LignoSatを打ち上げたロケット・SpX-31は、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ輸送船であり、LignoSatはまずISSに到着してから宇宙空間に放出される予定です。
世界初の木造人工衛星LignoSatを乗せたスペースX社のSpX-31が無事アメリカフロリダ州のケネディ宇宙センターから打上げられました。SpX-31は国際宇宙ステーションに物質を運ぶ輸送船です。この中にLignoSatがJAXAの小型衛星放出機構(J-SSOD)に収められ、宇宙に飛び立ちました。 pic.twitter.com/sEbn1ZHVEY— 京大宇宙木材プロジェクト (@spaceKUwood) November 5, 2024
World's first wooden satellite, developed in Japan, heads to space | Reuters
World's first wooden satellite heads to space in Mars exploration test | World News | Sky News
https://news.sky.com/story/worlds-first-wooden-satellite-heads-to-space-in-mars-exploration-test-13248719
The World's First Wooden Satellite Has Launched Into Space : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-worlds-first-wooden-satellite-has-launched-into-space
京都大学と住友林業は2020年にスタートした「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で、約4年かけて世界初の木造人工衛星「LignoSat」を開発し、2024年6月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ引き渡しました。他にも木造の人工衛星を研究するチームはあったものの、JAXAおよびNASAの安全審査を通過し、宇宙での木材活用が公式に認められたのはLignoSatが初めてとのこと。
LignoSatの見た目や開発過程については、以下の動画を見るとよくわかります。
世界初「木造の人工衛星」には『指物』の技術も!職人「可能性がある仕事だと再発見」 今年9月に打ち上げ 京都大学(2024年5月28日) - YouTube
LignoSatは1辺の長さが約10cmの立方体で、重さは約1kg。
チームはISSの船外プラットフォームで行われた木材の宇宙暴露実験をはじめ、さまざまな物性試験で得られたデータを基に木造人工衛星の開発を進めました。最終的なLignoSatの実機には、住友林業紋別社有林で伐採されたホオノキが使われています。
開発中のプロトタイプはこんな感じ。人工衛星の本体に木材を使うことで、大気圏突入時に燃え残る材料を極力減らすことができます。また、宇宙には木材の腐食を促す酸素や水がないため、地球上よりも宇宙空間で強い耐久性を発揮するとのこと。
前面にあるソーラーパネルで発電を行い、中に入った電子機器が位置情報や木造の状態といったデータを収集して、京都大学構内の基地局に送信する計画です。
しかし、木材をつなぎ合わせるためにクギやネジを使うと、温度変化によってひび割れてしまいます。LignoSatではこれを防ぐために、ネジや接着剤を一切使わずに木材を組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ」という伝統技法を用いています。
元宇宙飛行士としてスペースシャトルの搭乗経験もある京都大学大学院の土井隆夫特定教授は、「金属製の人工衛星は将来的に禁止されるかもしれません」「木材という自分たちで生産できる材料があれば、私たちは宇宙で永久に家を建てたり、生活したり、働いたりすることができます」とコメントしました。
住友林業の広報担当者は海外メディアのAFPに対し、「LignoSatは間もなくISSに到着し、約1カ月後に宇宙空間に放出されます」と述べています。展開されたLignoSatは軌道上に6カ月間とどまり、宇宙の極端な環境に木造人工衛星がどのように耐えるのかを測定するとのことです。